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事業承継の後継者がいない? 外部から後継者社長を募集する方法とポイント!

少子高齢化が進む中で平均寿命も延びてきていますが、それでも70歳を超えて経営のトップとして長く働き続けることは体力的に困難ですので、生きている内に事業承継の計画を進めましょう。
しかし、あらゆる分野(不動産、小売、介護、販売、土木や建設など)で後継者不在問題が生じています。親族や会社内に後継者がいない場合、外部の会社や経営者から後継者募集を行う必要があります。今回は継承者がいないため、後継者社長を募集する方法やポイントを解説していきます。

事業承継に対する考え方の変化

中小企業の社長は、日本が急激に経済成長を遂げた時代に事業を起こし、現在まで事業を継続している団塊世代の人が多く、現在70代に突入し、引退・世代交代を考える時期を迎えています。

団塊世代の社長が50代に差し掛かるころ、世間では「後継者は親族内から」という考え方が主流でした。
しかし現在では、「家を継ぐ」という概念が薄くなっており、後継者への考え方も大きく変化しています。無条件に子供に事業を継がせることができると考える親も、親の事業を継ぐのが当たり前だと考える子供もそれほど多くはありません。
個人の希望や能力、適性に合わせた仕事や生き方を選択するのが一般的な時代となってきたからです。

後継者不足問題とは

後継者不足問題とは、事業承継したいのに適任となる後継者候補がいない問題です。
後継者問題の原因は以下の通りです。
・人材不足
・社長の高年齢化

少子化の影響があり、多くの会社で若い人材不足が顕著化し、優秀で若い人材確保が困難な状態です。その状態にもかかわらず、中小企業の社長の多くが高年齢化してきたため、後継者となる人材を求めています。その結果、後継ぎ人材の獲得が難しくなり、納得いく事業承継ができずに会社の廃業を余儀なくされるケースも珍しくはありません。

帝国データバンクが2020年に公表した全国企業「後継者不在率」動向調査によると、後継者不足が深刻化している現状は以下の通りです。

エリアによって前年度比が違う

1つ目は「エリアによって前年度比が違う」ことです。

東京都などの関東や大阪府を含む関西、福岡県などの一部地方都市では、2019年度に比べて後継者不在の割合や程度が低下しています。
しかし、愛知県や岡山県、富山県などの地域では、前年度比較すると大幅に後継者の不在率が上昇しています。

製造の一部分野で後継者不在割合上昇中

2つ目は「製造業の一部業種で後継者不在割合上昇中」です。

製造業の一般機械器具や皮革・毛布などの分野を中心にいくつかの業種で後継者不在率が上昇しています。

有限会社の事業承継

有限会社の事業承継は株式会社と少々異なり、2つに分かれます。

出資持分がまだある状態

出資持分がまだある状態の場合、事業承継を行う際に「出資持分の名義変更」を行うことになります。この「出資持分」の評価は、会社の規模によって異なってくるため、適切な手法を用いて評価を行う必要があります。M&A・事業承継の専門家に出資持分の評価を依頼しましょう。

株式が発行されている状態

株式が発行されている状態の場合、株式会社の事業承継時と同様、株式を後継者に譲渡し「経営権を移転」する必要があります。
有限会社の場合、会社の定款に定めがなくても、発行する株式は「譲渡制限株式」と見なされることになります。また、有限会社は「株式への譲渡制限」を廃止できません。

つまり、有限会社の社長・経営者が事業承継を実施するために後継者に株式譲渡する際には、「株主総会」で譲渡承認請求の承認が必要となります。

事業承継で社長候補を募集する方法

経営者という責任の大きな仕事にいきなり未経験者や第三者が就任できるとは考えにくいので、一般的に事業を承継させる後継者を募集するには以下のような方法で行います。

親族または会社の中で探す

1つ目は「親族または会社の中で探す」方法です。

子どもなどの親族、または自社従業員から後継者を募集する方法です。両者ともにメリット・デメリットがあります。

後継者 メリット デメリット 共通
子どもなどの親族 後継者の教育・育成の期間に、時間を存分に使える 内部分裂して会社が分裂・倒産する可能性がある 経営の環境について先行き不安があったり、業績が悪い場合には、後継者になることを打診しても他のスタッフや親族から歓迎される可能性が低い
自社従業員 仕事のノウハウや技術は培っているので、会社の代表としての質を担保(獲得)しやすい ・株式を買い取るための莫大な資金を個人として用意

・企業が融資を受けるための保証人や個人資産を担保に入れるなど、かなりの覚悟がいる

 

2017年に株式会社帝国データバンクが発表した『後継者問題に関する企業の実態調査 』によると、国内の企業における企業の非親族(経営陣・従業員・社外の人材や企業)を後継者とする割合は、2011年には26.6%でしたが、2016年には32.4%にまで増加しています。つまり、事業承継における後継者の約3人に1人は非親族であり、この割合は今後も増加していくでしょう。

M&A仲介会社やマッチングサイトを利用する

2つ目は「M&A仲介会社やマッチングサイトを利用する」方法です。

具体的にいうと、求人募集サイトで求人情報を出すなどの方法です。
身近に後継者がいなくても、外部から幅広く後継者を募集できます。
後継者候補、次期経営者候補、幹部候補などと書き添えて募集を出します。最初から経営にかかわる人材として募集をかけると、やる気にあふれた人材や、業界の専門知識を持つ人材からの応募が来るかもしれません。

また、一般的な中小企業に加え、伝統工芸品づくりや染め物といった専門スキルを次世代に残したいなど、「後継者募集」に特化した人材募集サイトもあります。

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、複数の企業が統合する、ある企業がほかの企業を譲り受けたりする経営戦略です。譲渡した企業にとって、経営者の個人保証の解消や創業者利潤の獲得、経営基盤の強化など様々なメリットがあります。

現在では事業承継の選択肢として活用されることも少なくありません。このM&Aによる事業承継では、主に「事業譲渡」や「株式譲渡」といったM&A手法によって実行され、M&Aの買収側の経営陣が事業を引き継いでくれます。これによって、従業員の安定した雇用も確保できます。
さらに、事業譲渡や株式譲渡によるM&Aを実施すると、会社売却の対価として現金を受け取ることができます。
特に、中小企業の会社経営者は、「創業者利益」といわれるまとまった資金を手に入れることができます。

後継者を見つけるだけでなく、シナジー効果を得られるなど、さらなる企業の成長が期待できますが、信頼できる後継者をどうやって探すのかという問題や、税務や法務、会計の専門知識が必要という問題も生じます。不利なM&Aとなってしまうことがないように、無理に自分たちだけで交渉を進めるのではなく、信頼できるM&Aアドバイザーを見つけた上で慎重に検討しましょう。

各M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーによって、報酬体系に違いがあるため、仲介業務を依頼する際には「着手金や中間手数料が必要か」「料金体系はどのようになっているか」「最低報酬額は設定されているか」などを細かくチェックする必要があります。

後継者社長を募集する時のポイント

後継者社長を募集する時のポイントは以下の通りです。

未経験ではなく実務の経験が豊富な人材を選ぶ

1つ目は「未経験ではなく実務の経験が豊富な人材を選ぶ」ことです。

募集事項を公開している求人情報を見ると、事業承継の後継者に対して経験を不問としているものを見かけます。会社の経営を任せる以上、背負うものは大きいため会社の運営や自社に特有の業務について未経験人材を選ぶべきではありません。
出来る限り、実務や経営者としての経験が豊富な人材や、自社業務に関連する知識や理解を持つ人材を後継者社長として選びましょう。

年収や勤務地、残業の有無などの情報・条件を詳細に掲載する

2つ目は「年収や勤務地、残業の有無などの情報・条件を詳細に掲載する」ことです。

マッチングサイトなどを利用して募集をかける場合、年収や学歴などの条件を詳細に掲載するようにします。
優秀な社員を採用したい場合、「転勤なし」や「給与は○○円~保証」、「週休2日」などと具体的に求める条件を書いた方が集まりやすいです。
後継者社長も同じく、「年収は500万円」などと具体的に条件を記載しておいた方が、募集した際に多くの候補者を集めることができるでしょう。

まずはマネージャーや部長クラスから業務に就いてもらうことを検討・提案する

3つ目は「まずはマネージャーや部長クラスから業務に就いてもらうことを検討・提案する」ことです。

外部の人間が入社後、後継者社長になると、実務面で対応できなかったりして、専門性の高い職の従業員から反発や離反が起こる可能性があります。そのため、後継者社長には部長などのマネージャークラスから業務経験をしてもらうようにしましょう。
実務や人材管理担当を経験し、経営者としての教育や研修を行ってから経営者になってもらえば、社員や取引先からも理解を得られるでしょう。
営業などに携わってもらうことで、自社が持つ理念や課題を共有する効果も期待できます。

事業承継やM&Aに精通したコンサルタントの力を借りる

4つ目は「事業承継やM&Aに精通したコンサルタントの力を借りる」ことです。

外部からの後継者社長募集や他の株式会社に事業承継をする場合、手続きに会計や税務などの非常にハイレベルな知識が必要となります。
そのため、極力事業承継やM&Aに精通したコンサルタント(仲介会社や会計事務所など)に相談し、支援・サポートを受け、最適なアドバイスや他の専門家の紹介などを受けましょう。

まとめ

事業承継の後継者社長募集について解説してきました。以下、まとめになります。

・事業承継の後継者社長不足問題の要因は「優秀な人材不足」と「経営者の高齢化」
・従業員から反発や離反が起こる可能性があるため、外部から来た後継者社長には部長などのマネージャーや営業などの業務経験をしてもらう
・事業承継やM&Aに精通したコンサルタントの力を借りて適切なアドバイスや支援を受ける

事業承継の社長候補である後継者を外部から募集する時は、あらゆる手段やサービスを活用しましょう。事業承継は従業員全員の生活がかかっているので、そう簡単には終わりません。後継者問題を解決させるには、戦略的かつ時間に余裕を持ちつつ、次世代の人材確保を行い、元気で生きている内に後継者探しを含む事業承継計画を立てましょう。

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