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M&Aによる第三者事業承継に活用できるPEファンドとは?種類やメリットを解説してみた

事業承継とPEファンド

新型コロナウイルスの影響で経済活動が抑えられ、影響を受けて経営不振になった企業や、その前から経営者の高齢化や後継者不在によって黒字に関わらず廃業に追い込まれつつある中小企業は、コロナ禍によってさらに増加するかもしれません。中小企業の廃業が増えると、日本の経済や雇用への影響が大きくなるでしょう。
そうならないために、コロナの影響を受け経営不振になった企業や黒字経営であっても事業承継問題である中小企業などに対して、PEファンドを活用したM&Aによる事業承継手法が注目されています。
今回はM&Aによる第三者事業承継で活用できるPEファンドについて解説します。

PEファンドとは?

PEファンド(Private Equity Fund)とは、未公開株(Private Equity)(=非上場株式)に投資を行うファンドのことです。ファンドとは、投資家などから調達した資金を一定の投資対象で運用して、収益を分配することを指します。

PEファンドは、切り口によって様々な種類があります。投資企業の未公開株を買収し経営権を得た上で優秀な経営者を派遣し、投資企業の利益水準と企業価値を向上させます。投資額に見合う売却先が見つかった後、株式をIPO(株式公開)やM&A(第三者への売却)で資金回収を図ります。

M&Aによる事業承継の場合、自社株を譲受企業に譲渡することで、譲受企業は親会社となり、自社は譲受企業の子会社として新たに事業を継続していくことになります。そのため、PEファンドはM&Aによる事業承継で活用できる場面は多くなるといえるでしょう。

日本のほとんどの企業は非上場

日本には約400万社も企業が存在しますが、2022年05月19日時点で、日本の上場会社数は3,822社(内6社は外国会社)と9割以上が非上場企業です。非上場であれば、ライバル企業による買収防止、自由経営というメリットがあり、名の知れた有料企業が数多く存在しています。
参照:日本取引所HP(https://www.jpx.co.jp/listing/co/index.html)

PEファンドの投資対象・投資期間・特徴

PEファンドの投資対象と投資期間は以下の通りです。

  • 投資対象:中堅・中小企業、大企業の子会社やノンコア事業部、事業再生が必要な企業や不良債権など
  • 投資期間:おおむね3年から5年。ごくまれに10年近く株主として株を持ち続ける場合もある
  • 特徴:ファンドが持つ様々な経営の専門知識やノウハウ、コネクションなどを使用し、事業承継後の企業価値を最大限向上させる

PEファンドの仕組み

PEファンドの出資モデルや収益モデルは以下の通りです。

PEファンドの出資モデル

  1. ファンドの運営会社がファンドを設立
  2. 機関投資家を中心に、一部個人投資家に対して出資を募集
  3. ファンドが予定していた資金が集まる(ファンドの規模は小さなものでおよそ100億前後で、大きくなると1000億近くにもなる)

PEファンドの収益モデル

  1. 投資家からファンドに集められた資金は、複数の投資先へ出資される
  2. 未上場企業を中心に投資を行うPEファンドのリスクはそれなりに高いため、企業への出資時にレバレッジをかけ、リターン率を高めることがある
  3. 投資先企業の資産を担保に入れ、金融機関から借り入れを行い(レバレッジドバイアウトローン(LBO))、出資金とは別の資金を追加で投入することでより多くの投資先へ出資でき、リターン率を高める
  4. 投資先企業をM&Aで売却、もしくはIPOを行いその収益をファンドが回収する

PEファンドの業務ステップ

資金調達を完了したPEファンドが収益を得るまでに行う業務ステップは以下の通りです。

①ソーシング

ソーシングとは、投資対象となる案件の発掘業務のことです。ソーシング活動は大きく分けると以下のようになります。

  • 後継者不在で悩んでいるオーナー社長に事業承継問題の解決や相続税対策の観点からPEファンドの活用を提案
  • 企業へPEファンドを活用した主力事業でない子会社や事業部の売却や成長支援などの提案
  • 多くのM&A仲介会社から案件紹介を受けるので、その中から投資方針に合致した投資先をスクリーニングする
  • 金融機関から多くの案件紹介を持ち込まれ、その中から対象企業の絞り込みを行う

②エクゼキューション

エクゼキューションとは、案件実行のことです。ソーシングで決定した投資対象先に対して、企業価値評価やデューデリジェンス(DD)を行い、交渉を経て最終契約を締結します。

③バリューアップ

バリューアップとは、エクゼキューションによって投資が実行されたあとの運用のことです。

PEファンド投資期間は、一般的に5年前後であり、IRR(internal rate of return:内部収益率)で20~30%前後の利益を出そうとすると、企業価値を約2.5倍まで引き上げる必要があります。そのためには、主に以下の事を実行します。

売上の拡大

PEファンドが持つ、製品単価の引き上げや製品ラインナップの強化、そして店舗の拡大や新規出店などのオペレーションを標準化させるためのノウハウを活用し、効率よく最短距離で売り上げの拡大を目指します。

費用の削減にともなう利益率の改善

利益率改善の確実で一番近道な方法は、費用削減です。

  • 売上原価を削減:利益率の低い製品のラインナップ見直し、徹底的な原材料のボリュームディスカウントなどを行う
  • 販売費および一般管理費を削減:オフィスの移転やオンライン化の徹底、保険の解約やコンサルタント契約の解消など、各部門の経費を徹底的に削減

④EXIT

EXITとは、バリューアップによって企業価値が増大した投資先企業の株式や事業を新たな買い手に譲渡し、投資資金を回収することです。

PEファンドのEXITのほとんどはIPOでした。しかし、IPOと比べM&Aは投資回収期間が短く、ファンドの資金を高回転で回せるなど、現在のEXITはむしろM&Aが主流です。

M&AによるEXITを行う場合は、次のような流れになります。

  1. 買い手候補先を何社かに絞り込む
  2. 入札によって最終候補を絞り込む
  3. DD実施後にPEファンド内の投資委員会の決裁を受ける
  4. 最終契約を締結して取引を実行する

PEファンドの種類

PEファンドの形態は、主な投資先企業の種類によって以下のように異なります。

ベンチャーキャピタル(VCファンド)

ベンチャーキャピタル(VCファンド)とは、創業期や収益が成長して上場を狙う成長期にあるベンチャー企業に出資するPEファンドのことです。

出資後買収はせず、既存の経営者に経営を任せ、主なEXITは上場した際のIPO益で大きく利益を稼ぐ手法を取ります。

莫大なリターンが得られれば稼ぐことはできますが、投資対象が創業したばかりのベンチャー企業なので失敗して投資資金回収ができない可能性が圧倒的に多く、他のファンドに比べハイリスク・ハイリターンといえるでしょう。そのため、一般的に複数企業の株式を少しずつ保有する分散投資を採用しています。

また、最近では、IPOと比べて回収資金は少ないものの高確率でEXIT可能なM&Aによる第三者への売却案件が増えつつあります。

ディストレスファンド

ディストレスファンド(ハゲタカファンド)とは、将来回復見込みがあると予想した経営破綻状態に近い企業の株式や債券を投資対象とするPEファンドのことです。

株式や社債を安価で買い取って転売したり、法的・私的整理やリストラなどの企業再建を断行します。その後、ある程度健全化の目途が立ったところでM&Aにより高値で売却します。

運営に専門知識が必要で、非常にハイリスクな投資であり、ディストレスファンド活動が活発化したバブル崩壊後の日本では、別名ハゲタカファンドと呼ばれていました。

事業再生ファンド

事業再生ファンドとは、再生可能性が中程度の経営不振未上場企業に投資するPEファンドのことです。

安く株式を買収できるため、企業価値向上することで大きな保有資産売却による売買差益獲得に期待できますが、一歩間違えれば倒産してしまうこともあるため、PEファンドの中でもハイリスク・ハイリターン型といえます。

リストラ・ダウンサイジングによる再生を目指す「ワークアウト」や事業の方向転換による再生を目指す「ターンアラウンド」などの手法により、出来る限り早く企業を正常な状態に戻し、M&AによってEXITを目指します。

バイアウトファンド

バイアウト(Buyout)ファンドとは、既に利益が安定的に出ている成熟期企業に投資を行い、過半数の株式を買収して経営権を取得した上で経営陣を派遣し、企業利益増加・企業価値上昇後に上場させる、または高値で売却して大きな利益を得るPEファンドのことです。

買収・売却と企業価値向上で非常に高い専門性を必要としますが、投資対象が成熟期企業なので、低い投資リスクで高い収益が得やすいです。そのため、PEファンドの中で最も安定した高い利回りが出せるファンドといわれています。

PEファンドの7割以上を占める最も主流でPEファンドらしいファンドともいわれており、以下のようなさまざまな場面で企業と深くかかわっています。

事業承継

後継者のいない企業の株式を後継者として買い取り、事業を承継します。承継後はバイアウトファンド側が役員を派遣し、ノウハウなどを活用して企業価値のさらなる向上を目指します。

MBOによる非公開化

上場メリットが薄いと感じた会社の経営陣が株主から株式を買い取るため、バイアウトファンドに必要な資金を出資してもらい、その資金で市場から株式を買い取って株式を非公開化します。これをバイアウトファンドを活用したMBO(Management Buyout)といいます。

カーブアウト

カーブアウトとは、大手企業が子会社や事業内の主力事業ではない部門を切り離して売却する際に、バイアウトファンドが出資を行い、その子会社や事業を買収することです。

成長支援

成長支援とは、成長が停滞している成熟期の企業に対し、バイアウトファンドが出資を行い、資金だけでなく役員が派遣され、経営戦略の立案や徹底した原価管理などのさまざまなノウハウが提供し、さらなる飛躍を目指す支援方法です。

事業承継でPEファンドを活用するメリット

事業承継でPEファンドを活用するメリットは以下の通りです。

資金調達手段が潤沢

第三者事業承継では、事業会社が買収のための資金を十分に調達できないケースが発生する可能性があります。その場合、第三者事業承継候補者に資金調達手段が潤沢なPEファンドを選択肢しましょう。

PEファンドは多くの機関投資家から投資を受けているので、金融機関と比較しても十分な資金を持っています。集めた資金で非上場企業の株を買い取り、積極的に経営に関与することで企業価値を高めていきます。

また、PEファンドからの出資金は借入金ではないので、毎月の元本返済や金利などを支払う必要がありませんので、出資を受けた資金は全て企業価値向上のために投入可能です。そのため、PEファンドを活用した第三者事業承継は、事業承継問題解決だけでなく、新たな管理体制の構築や経営の改善・発展にも繋がる手厚いサポートも受けることができます。

企業文化が維持されやすい

通常の第三者事業承継では、買い手企業に経営権を完全に移譲することになり、企業文化を合わせなければいけない可能性が高くなります。

しかし、第三者事業承継にPEファンドを活用した場合、経営権はファンド側が掌握しますが、日々の会社運営は従来の経営陣に託されるという方法もあります。

また、従来の企業文化やブランドが企業価値向上につながると判断されれば、維持・発展される可能性が高くなるでしょう。

最適な売却先企業を紹介してもらえる可能性が高い

PEファンドは多くの企業に投資しているので、様々な業界の企業との繋がりや、役員・従業員などの数多くの人脈があり、M&A戦略に長けた専門家が多数在籍しています。

PEファンドは承継した会社を3年から5年で売却してしまうため、次の売却先がどのような会社になるのかは、そのときにならなければわかりません。

第三者事業承継にPEファンドを活用すれば、企業価値を最大限に高めてくれた上で、最適な売却先企業を紹介してもらえる可能性が高くなり、売却された会社はより一層発展していくでしょう。

まとめ

第三者事業承継で活用できるPEファンドについて解説してきました。以下まとめになります。

  • PEファンドには、投資先企業形態によって種類が異なりますが、様々な経営の専門ノウハウ、コネクションなどを使用し、第三者事業承継後の企業価値を最大限向上させるという点が共通している
  • PEファンドのEXITのほとんどはIPOだったが、投資回収期間が短く、ファンドの資金を高回転で回せるなど、M&Aは現在のEXIT主流
  • PEファンドは承継会社を3年から5年で売却してしまうため、次の売却先はそのときにならなければわからないが、企業価値を最大限に高めてくれた上で、最適な売却先企業を紹介してくれる可能性が高いので、第三者事業承継としてメリットが多い手段といえる

PEファンドをは、黒字経営にもかかわらず後継者が見つからない中小企業などを中心とした第三者事業承継としての活用法です。PEファンドにより中小企業の第三事業承継が行われ、雇用が維持されることで、地域社会や日本経済にとって非常にプラスになるといえます。今後はコロナ禍などで経営不振に陥った企業の株式を取得し、事業再生させる活用法としても増えていくのではないでしょうか

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