1. HOME
  2. ブログ
  3. M&A
  4. 事業承継とデューデリジェンスの関係性とは?M&Aにとってデューデリジェンスは必要不可欠なプロセス!

BLOG

ブログ

M&A

事業承継とデューデリジェンスの関係性とは?M&Aにとってデューデリジェンスは必要不可欠なプロセス!

事業承継とデューデイジェンス

経営者高齢化など、様々な問題により後継者が見つけられず、事業承継が行えなかったため会社を畳んでしまう中小企業は多いです。親族や従業員に後継者が見つけられない場合、第三者に事業承継を行うM&Aという手法が選択肢として挙がってくるでしょう。

中小企業M&Aを行うにあたって非常に重要なプロセスの1つがデューデリジェンスです。デューデリエンスは企業の買収や合併、組織再編を行う前に対象企業を調査するため、M&Aの意思決定に欠かせないプロセスです。デューデリジェンスの精度によって、M&Aの成功はかかっているといえるでしょう。今回は事業承継とデューデリジェンスについて解説します。

M&Aという第三者事業承継

親族や従業員などに後継者候補がいない場合、M&A(Merger&Acquisition:合併&買収)で会社を売却することで第三者事業承継を検討しましょう。

M&Aとは、2つ以上の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)です。企業や事業の全部譲渡(合併、株式売却、株式交換)と一部譲渡(会社分割、事業の一部譲渡)する方法があります。

後継者が見つからなかった場合、従業員の雇用維持、取引先の仕事確保、経営者の老後の生活資金確保等のため、会社そのものを売却し、第三者に経営してもらうことも考えられる選択肢の一つであり、近年中小企業のM&Aが増加しています。

このM&Aにおいて必要不可欠といえるのが、デューデリジェンスとなります。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Diligence:当然行われるべき努力)とは、買収及び合併する対象企業の価値やリスク・リターンを正しく把握するために、売り手企業を査定・評価するプロセスのことです。

ビジネス、財務、税務、法務、人事といったさまざまな観点から、企業の価値、将来の収益性、リスクの調査および分析が行われます。

デューデリジェンスを行う事で、権利義務関係、企業価値評価に必要な情報、取引実行に必要な手続き、支障となりうる事象などを把握することができます。

専門的かつ法的な知識を要するため、一般的に公認会計士や弁護士、経営コンサルタントに依頼することが多いです。M&Aだけでなく不動産投資や投資有価債券の取引などの場面で行われています。

M&Aの場合、デューデリジェンスはM&Aを実施する当事者が対象企業やその事業に関する価値や資産、リスクなどの情報を収集、分析及び検討する手続きを指します。

結果を基にM&Aのスキームを検討したり、適切な対価・取引条件、考えられるリスクについて判断し、問題が見つかった場合、譲渡価格の見直しや対処方法の取り決めを行ったりなど、M&Aの最終段階において問題がないかを洗い出し、解決を図ります。

このように、デューデリジェンスはM&Aの実行可否を判断する材料集めであり、交渉の最終局面における成約までの準備作業といえるでしょう。

M&Aにおけるデューデリジェンスの期間

デューデリジェンスは一般的に、M&Aの交渉フェーズ最後にある「基本合意契約の締結」後に行われ、コストや作業量を鑑みて調査項目を決定していきます。

双方にとって、M&Aにかかる時間は出来る限り短縮したいものです。

調査時に一から資料準備を行わないように、企業概要書の作成段階などで資料を揃えるための調査・準備を並行で進めています。

また、各分野のデューデリジェンスすべてを実施した場合コストも時間もかかるので、それを防止するためデューデリジェンスの「目的明確化」「優先順位づけ」も行っています。

中小規模M&Aであれば1日~1ヵ月です。一般的には1〜2ヶ月であり、対象会社に訪問するのも数日のみで行われます。

デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスの目的は以下の通りです。

買収価格の算出

1つ目は「買収価格の算出」です。

売り手企業の事業計画や収益性の調査、また、財務諸表に計上されている資産や計上されていない債務の有無などの調査を行うことで、売り手企業から出てきた事業計画や財務諸表をそのまま使うのではなく、適切な買収価格を決定することができます。

リスクの把握

2つ目は「リスクの把握」です。

デューデリジェンスを行うことで、売り手企業が意図的に隠している、管理体制が整っておらず、適切に把握ができていないことで帳簿外の債務が隠れている可能性などのリスクを適切に把握することができます。

買収後のPMI事前準備

3つ目は「買収後のPMI事前準備」です。

M&Aを実施後、新経営体制の構築・経営ビジョン実現のための計画策定・両社協業のための体制構築・業務オペレーション、ITシステム統合を行います。この一連の流れをPMI(Post Merger Integration:経営統合プロセス)と呼びます。

PMIはM&Aの中でも重要なフェーズと言われており、その事前準備であるデューデリジェンスは重要といえるでしょう。

M&Aにおけるデューデリジェンスの主要項目

M&Aにおいて主要なデューデリジェンスの項目は以下の通りです。

事業デューデリジェンス

1つ目は「事業デューデリジェンス」です。

事業デューデリジェンスとは、M&A対象企業が取り扱う商品やサービスを中心に、営業戦略、マーケティングといった事業に直結する内容の評価調査です。

財務デューデリジェンス

2つ目は「財務デューデリジェンス」です。

財務デューデリジェンスとは、対象企業の決算時の財務諸表、過去の業績推移、設備投資、簿外債務、収益性、キャッシュフローなどを、財務的観点から不正取引がないかなど売り手企業の財政状態を調査・分析することです。

税務デューデリジェンス

3つ目は「税務デューデリジェンス」です。

税務デューデリジェンスとは、M&A前の対象企業の法人税の未払いや債務超過など、過去の財務上のリスクや、M&A後にかかる税を調査することです。

株式譲渡の場合、過去の申告漏れや納税処理の誤りがM&A後に発覚すると、売り手側企業にペナルティが課され損失を被ることもあるため、売買判断材料として特に重要項目となります。

法務デューデリジェンス

4つ目は「法務デューデリジェンス」です。

法務デューデリジェンスとは、譲渡企業が締結している事業に関する権利、債券債務について、法務上の問題やリスクが無いかを調査することです。

人事デューデリジェンス

5つ目は「人事デューデリジェンス」です。

人事デューデリジェンスとは、両社の人事制度や労働条件の融合の際に活用される人事制度、人材教育、労使や採用など対象企業の人事全般に関する実態調査のことです。

社員に関する課題を解決しなければ、統合による相乗効果を生み出すことはできないため、M&A後の組織再編において人事デューデリジェンスは大変重要となります。

ITデューデリジェンス

6つ目は「ITデューデリジェンス」です。

ITデューデリジェンスとは、売り手企業の既存システムとの統合にかかる作業量やコスト、新規システムの必要性などを考慮し、基幹業務に関するシステムをどのように結合すれば良いかを検討し、将来的な影響についてを調査、分析することです。

デューデリジェンスの手順

デューデリジェンスの手順は以下の通りです。

事前準備

1つ目は「事前準備」です。

事前準備は、以下の事を実施の1~2週間前を目安に進めていきます。

  1. 各種必要書類(登記簿謄本、株主名簿、財務諸表・税務申告書・KPI資料、事業計画など)を用意し、チェックリストを作成
  2. 各デューデリジェンス項目に応じて適切な専門家や専門機関への調査依頼

弁護士や会計士などの専門家はチェックリストを基に調査を行います。任せきりではなく密なコミュニケーションが重要となるため、随時情報共有を行いながらアドバイスや提案を受けるのがいいでしょう。

資料分析

2つ目は「資料分析」です。

デューデリジェンスの実務で最初に行われるのが、買い手企業による売り手企業へのM&Aに関わる資料開示請求です。

売り手企業は要請に応じた資料開示を行い、買い手企業は開示された資料を基に、売り手企業の財政状況、市場面や顧客面など、さまざまな視点で資料分析・把握作業が行われます。この分析は、譲渡価格決定や契約書作成に大きく影響します。

マネジメントインタビュー

3つ目は「マネジメントインタビュー」です。

マネジメントインタビューとは、開示請求した資料では不足していた情報を補うために、M&A担当者や売り手企業のマネジメント層に対してヒアリングを行う作業です。

主要分野のデューデリジェンスは、それぞれ半日~3日程度かけて行います。

経営者にインタビューすることで、経営者の考え方や企業理念など書面では判断しにくい項目を直接質問することができます。そのため、会社の全体像や方向性を確認することができ、より具体的に融合後のシナジーやリスクが可視化可能となります。

インタビュー終了後は対象企業へ出向き、実際に事業の現場を見て回る現地調査を行い、これらの結果を踏まえて、契約書作成を行います。

売り手企業がデューデリジェンスにおける注意点

事業承継の際、売り手企業がデューデリジェンスにおける注意点は以下の通りです。

認識している事項は伝える

1つ目が「認識している事項は伝え、協力する」ことです。

売り手側にとって、デューデリジェンスは対応範囲が広く、準備するものが膨大となります。

デューデリジェンス後に伝えていないリスク項目が発見された場合、売り手側の誠実性が疑われ、その後の交渉が不利に働く可能性があります。

デューデリジェンスにおいて、成功確率をあげるために必要なのは誠実性と協力です。

協力することで期間短縮が可能となり、良い印象を与えることができます。

そのため、事前に認識しているリスク項目は伝え、資料などは提出しておきましょう。

情報の開示範囲に気をつける

2つ目が「情報の開示範囲に気をつける」です。

デューデリジェンスでは個人情報が含まれている場合、取り扱いに注意が必要です。

秘密保持契約締結などにより個人情報を出せない場合は、買い手側に誠実な説明を行い理解してもらった上で、話せる範囲で提出をしましょう。

費用がとてもかかる

3つ目は「費用がとてもかかる」ことです。

デューデリジェンスは規模によって異なりますが、小規模案件だと1つの分野に対して30万円〜300万円程度、デューデリジェンス全体で100万円〜500万円程度となります。規模が大きくなると全体で1億円を超えることもあります。

また、M&Aに慣れている企業は多くはないため、仲介会社への手数料などもかかります。仲介会社に支払う着手金相場は50万円〜200万円程度です。

まとめ

事業承継とデューデリジェンスについて解説してきました。以下まとめになります。

  • デューデリジェンスとは、M&A最終決定前のタイミングで行う必要不可欠なプロセス
  • デューデリジェンスを最短で行うためには、各分野デューデリジェンスそれぞれに明確な目的を定め、優先順位をつけて実施する
  • M&Aによる事業承継を選択した場合、信頼できる専門家・専門機関との連携や、スムーズなデューデリジェンス実施が成功のカギとなる

M&Aによる事業承継は、中小企業では増えつつありますが、個人営業による店にとっては費用が高く、専門的知識が高いためまだまだハードルが高いです。

M&Aを成功させるためにはデューデリジェンスが必要不可欠です。後継者が見つかりそうにない、事業承継ができそうにないと感じた場合、早めにM&Aを検討し、デューデリジェンスに必要な書類を準備し始めてみてはいかがでしょうか。

関連記事