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事業承継はデジタル化へ踏み切る最良のタイミング? 高齢化が引き起こす日本経済への大ダメージ!

中小企業の経営者の高齢化と引退に伴う廃業が日本経済に大きなダメージを与え、経済の衰退が懸念されています。
高齢の先代から事業承継した場合、会社の根幹を支える従業員も高齢の場合が多く、人の力量に頼っている場合があります。この先会社が何十年も生き残るために、後継者は事業承継に伴い会社のデジタル化を行う必要があります。
今回は事業承継とデジタル化について解説します。

デジタル化とは

ITツールには、コミュニケーションや事務処理などの業務を円滑に進めるための情報系システムから、財務や生産管理、勤怠など事業の中核をなすような個別の業務に特化して処理する基幹系システムがあります。

さらに、昨今はIoTやビッグデータ、AIなどの先進的な技術の活用も進み、デジタル技術を応用した新しいビジネススタイルが広がっています。

中小企業はこれらのツールを導入することで業務の効率化や得られたデータを戦略的に活用し、新たな価値の創造につなげられると期待されています。中小企業の「デジタルへの置き換え」や「新たな価値の創造」までを含めた取り組みを「デジタル化」といいます。

また、新型コロナウイルスによるテレワークなど働き方の多様性発見のように、デジタル化は中小企業の事業変革や新しい組織づくりの推進力にもなります。

中小企業におけるデジタル化の課題

従業員の多い中小企業は、アナログな文化・価値観の定着や組織の ITリテラシー不足、長年の取引慣行といった課題を挙げる傾向があります。
これまでの業務の慣習から抜け出せないケースが多いため、デジタル化によって業務の変化や得られる効果など、より具体的なイメージを抱けるように準備を進めることが必要です。
また、従業員の少ない企業は、明確な目的・目標が定まっていないことや資金不足といった課題を挙げる傾向があります。 
実際にツールを導入しても目的が決まっていなければ効果は発揮されず、使いこなすこともできません。そのため、何のためにデジタル化を進めるのか、そのために必要な教育とは何かについて考える必要性があります。

2021年版中小企業白書から見たデジタル化と企業の関係

世界的な新型コロナウイルスの流行によって、企業は事業継続危機となり、日本国内でもデジタル化の重要性を再認識させられました。

2021年版中小企業白書によると、新型コロナウイルス流行後のデジタル化に対して、「事業方針上の優先順位は高い」「事業方針上の優先順位はやや高い」と回答する割合が6割を超えました。しかし、4割弱は「重視していない」という回答でしたので、大きなデジタル化の波が来ている今でも経営的にそれを重視する機運は決して高まっていないと言えるのかもしれません。

デジタル化には経営者の関与度と労働生産性が関係している

デジタル化の推進には経営者の関与度と労働生産性との関係が深く関わっています。
経営者が積極的、あるいはある程度関与している企業では労働生産性の平均値が高くなる傾向があります。経営者が関与せず、システム部門や現場の責任者などに一任している企業の労働生産性の平均値は、経営者が積極的に関与している企業の 86.7%の水準となっています。
そのため、デジタル化推進には、個別の部署単位で取り組むよりも経営者も含め組織全体で推進していくことが重要です。

事業承継とデジタル化

高齢の経営者から事業承継を行う中小企業の場合、先代を支えてきた社員や工場の技術者も高齢の可能性が高くなります。そうなると、長く務めてきた先代や社員、技術者しか把握していない情報が多いということになります。人の力に頼り切った経営では生き残る事は難しく、今後の経営に支障が生じることでしょう。

そうならないために、後継者はこれから先の10年、20年を見据えて業務の見える化、標準化だけでなく、人材不足を見据えた省力化を行わなければいけません。人の力量だけに頼っていては、デジタルを巧みに操る会社に絶対勝てないからです。

しかし、業務から属人性を排除しようとした場合、社員からかなりの抵抗を受けます。古くからいる社員や技術者は、経験豊富、積み上がった成功体験、優秀な技術と能力があると自負しているため、自分達の仕事のやり方を変えようとしませんし、人の力量に頼った業務の回し方が根付いているため、それを抜本的に改革するには相当の覚悟がないと乗り越えられません。その覚悟を固める上で、事業承継は最適なタイミングといえます。

後継者が行うべきことは、高齢化が進んでいる社員や技術者が全員引退しても会社がしっかり回せて、今以上のパフォーマンスを発揮できるようにすることです。そのためにはERPによる業務全体の標準化や省力化実現が先決です。

ERP(Enterprise Resources Planning)とは、企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用する計画のことです。
現在では、「基幹系情報システム」を指すことが多く、企業の情報戦略に欠かせない重要な位置を占めています。
ERPのメリットは「情報の一元管理」であり、点在している情報を一箇所に集め、その情報を元に企業の状況を正確かつタイムリーに把握し、経営戦略や戦術を決定していきます。さらには、ITを活用して「業務の効率化」を図る、他のシステムとの連携によりスピード化を実現する、といった目的の導入も増えています。

また、人手不足の中でも現場の人間が後継者を育てたい場合において重要なのは、デジタル化できるところは徹底的に自動化し、かつ、自動化を阻害するような特殊なプロセスはすべて一掃してしまい、会社にとって最も重要なことだけをしっかりと伝えられようすることです。

部門ごとの業務ニーズをどう満たすかではなく、会社全体として、市場の変化や顧客の要求に対応するスピードをどう上げるかに重点を置く必要があるからです。

クラウドERP導入などの中小企業のデジタル化は、経営判断が早くなることで急な発注への納期回答も即時的になり、見積作成や資材発注も自動化できます。その結果、顧客満足が高められるので競争力も強化されるでしょう。

デジタル化には、必要な人材想定と環境作りが大切

デジタル化を行った場合、新しいビジネスモデルや付加価値を生めるような人材が集められるだろうかという不安が立ちはだかります。
その場合、どんな資質やスキル、バックグラウンドを持った人材が必要か考えることが重要です。
顧客が自社に本当に求めていることを徹底的に突き詰め、そのうえで、顧客欲求を自社のコアとデジタルで満たすための新しいアイデアを考える必要があります。

必要な人材を見定めたうえで、デジタル化推進の適任者を社内から見つけ、社内に足りないスキルや能力、視点を持った外部の人間の協力を仰ぎ、社員とチームを組ませて小さなプロジェクトを立ち上げ、仮説・検証を繰り返させるような環境作りを行いましょう。

事業承継を通じた企業の成長と発展

2019年までの休廃業・解散件数は4万台半ばで推移していましたが、2020年は4万9,698件になりました。新型コロナウイルスの影響もありますが、休廃業・解散件数増加は経営者の高齢化が一つの原因のようです。
一定程度の業績を上げながら休廃業・解散になってしまった企業の貴重な経営資源を散逸させないために、意欲ある次世代の経営者や第三者などに事業承継することが重要となってきます。
事業承継の準備をまだしていない経営者は、外部の支援機関の活用も含めて、早期に準備を進める必要があります。

第三者承継の重要性

平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人になると予測されており、その半分が後継者未定となっています。有望な企業の事業継続のためには、第三者承継が重要となってきます。

事業承継×デジタル化サポート事業

群馬県桐生市は事業承継支援専門家派遣事業として「事業承継×デジタル化サポート事業」を行っています。

事業内容は以下の通りです。
・中小企業診断士、ITコーディネータ等の事業承継、経営改善、ITに精通したアドバイザーによる支援チームによる3回の面談を通して、経営課題、事業承継に係る課題、業務課題等を整理して見える化を行う
・課題解決に向けたデジタル技術の活用(可能性)も提案
・見える化・磨き上げ(デジタル化・経営改善)を支援し、円滑な事業承継に向けた取組みを加速化

「事業承継診断」を受けた県内中小企業者のうち、対象事業者は以下の通りです。
・事業承継診断実施機関(商工団体・金融機関等)が、当該事業による支援が適当と判断した事業者
・専門家と一緒に承継課題・経営課題等の見える化や磨き上げに向け、IT導入・活用可能性を検討したい事業者

費用負担は無料であり、募集期間は2021年7月9日から2022年2月28日までです。ただし、申込みが30事業者に達した時点で事業終了となります。
事前に一般社団法人群馬県中小企業診断士協会へお電話で申込状況について確認のうえ、必要書類を郵送申請してください。

まとめ

事業承継とデジタル化について解説してきました。以下、まとめになります。

・デジタル化とは、ITツールを導入する事で業務の効率化や得られたデータを戦略的に活用し、新たな価値の創造やデジタルへの置き換えを行うこと
・事業承継した後継者が行うべきことは、ERPなどのデジタル化によって、高齢社員が全員引退しても会社が運営でき、今以上のパフォーマンスを発揮できるようにすること
・事業承継の準備をまだしていない経営者は、第三者承継の利用を視野にいれる必要がある

高齢化が進んだ中小企業の場合、アナログな文化・価値観の定着や組織の ITリテラシー不足、長年の取引慣行といった、これまでの業務の慣習から抜け出せないケースが多いため、デジタル化によって業務の変化や得られる効果など、より具体的なイメージを抱けるように準備を進めることが必要です。デジタル化を導入する明確な目的や目標、そしてそれを使いこなせる教育の準備も重要となります。
人の力量だけに頼っていては、デジタルを巧みに操る会社に絶対勝てません。会社に長く根付いてしまった働き方を抜本的に改革するには相当の覚悟がないと乗り越えられません。その覚悟を固める上で、事業承継は最適なタイミングといえるでしょう。
第三承継の利用もありますので、事業承継の準備をまだしていない経営者はこの機会にぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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