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同族会社における事業承継について解説

中小企業の多くが同族会社

日本の経済を支えている企業のほとんどが中小企業であり、その多くが同族会社です。

同族会社における後継者、相続問題はとても複雑化もしくは長期化するケースが多いため、そうならないための備えが必要になります。今回は同族会社における事業承継について、通常とはどう違うのか、問題点、注意点を解説していきます。

同族会社とは

同族会社とは、経営者一族が会社の出資持分の全部またはほとんどを所有している会社のことを指します。民法上、規定はありませんが、税法上の用語が一般化して「同族会社」と呼ばれるようになりました。

同族会社のメリットとしては、意思決定が素早くチャンスを取り逃さないことや株式上場が不要であることが挙げられます。反面、経営者の独断による強引な事業が行われやすいという懸念があります。これに対し、税法上で厳しい措置(行為計算の否認、留保権課税制度など)が設けられているために経営者が死亡してしまうと、そのまま会社の存続の危機に陥りやすくなります。

【行為計算の否認】

行為計算の否認とは、通常は考えられないような経済行為によって税金逃れを図る行為があった場合に税務署長が税額の計算をすることができるというものです。

たとえば、同族会社は一族で経営判断ができることから、不必要な別荘やヨットを購入したり、高額な役員報酬の支給をしたりすることも簡単にできてしまいます。このような事態に備えて、法人税法上、同族会社の行為計算の否認規定が設けられているのです。

【留保権課税制度】

同族会社は、一族で意思決定することが可能ですので、株式上場した会社のように一般の株主からの配当要求もありません。したがって、剰余金も自由に処分することができることから、内部留保した金額のうち一定額を超える金額については通常の法人税とは別に特別の法人税が課されることになります。これを「留保権課税制度」といいます。

同族会社の判定基準

同族会社は、税法上3つの基準によって判定されます。それぞれ見ていきましょう。

【持分基準】

発行済み株式数の内、上位3人以下で50%以上の株式を保有している場合、同族会社と判定されます。

例)発行済株式総数が200株で、株主はA~Eの5人の例で見てみましょう。

株主AとEが夫婦で、夫Aが75株、妻Eが15株持っていて、Bは40株、Cは35株、Dは25株持っているとします。

そうすると、上位3順位は90(A+E)+40(B)+35(C)=165となり、これを総株式数200で割ると、82.5%となり、A+Eが50%を超えることになりますので、同族会社ということになります。

【議決権基準】

株式の総数とは別に、議決権の過半数を有しているかどうかも判定の基準となります。

例)発行済株式総数が200株で、株主はA~Eの5人の例で見てみましょう。

株主AとEが夫婦で、夫Aが75株、妻Eが15株持っていて、Bは40株、Cは35株、Dは25株持っていて、議決権はそれぞれ20個持っているとします。

そうすると、上位3順位の議決権数は、40(A+E)+20(B)+20(C)=80となり、これを総議決権数で割ると、80÷100=80%で50%を超えることになりますので、同族会社ということになります。

【社員数基準】

持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)では、業務執行は社員(出資者)の過半数をもって決定します。しかし、この時には出資金額に左右されないことから、同族会社か否かを判定する際にも、株式数、議決権数に加え、出資社員の数によって判定するものとしています。例えば、業務執行社員の定めのある持分会社で、全社員9名に業務執行権がある場合には出資額のみの判定となるので、同族会社ということになります。

同族会社の自社株対策

自社株とは、一般的にオーナー経営者が主として株式を所有する会社の発行株式のことをいいます。

自社株は、会社の経営維持のために必要であるのは言うまでもありませんが、評価額が高額になってしまうことが多いことから、事業承継対策をするうえでも大変重要となります。

【高額な評価額】

自社株の評価額は、設立当初の払込金額の何十倍となっているなど、自社株の評価額が高額になり、納税資金の確保が難しくなることもあります。自社株の評価が高くなってしまい、思いがけない相続税の納税資金を用意できず、会社の経営まで危うくなるケースもあるのです。そこで、事業承継の場合には相続税対策とともに自社株対策が大変重要となってきます。

【トラブル防止】

相続財産には、不動産や現金預金などのほかに、自社株も含まれます。

この時、遺言書がないと相続人間で協議がなされますが、この相続財産の分配をめぐって相続トラブルに発展するケースがあります。

こうなると、自社株を確保できなければ、後継者は事業を維持することができず、結局は会社の存続さえ難しくなるケースが多々あるのです。

このようなトラブルを防ぐためには、あらかじめ遺言書を作成して、後継者に事業を継続するうえで必要な自社株や事業用不動産などを相続させるよう対策を行っておく必要があります。

具体的には、会社法の利用による株式対策、税務上の株価引き下げなどの対策が必要になります。これらの対策は親族の状況や持株割合、相続財産の総額などによって異なってきますので、事業承継対策を行う場合には、必ず税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

【経営権の維持】

経営権とは、経営者自身の経営方針を通せるだけの株式を有していることをいいます。

けれども事業を行っていくうえでは、会社を増資して新株を他人に引き受けてもらったりした結果、経営者の持株割合が低くなってくるケースもあります。

持株割合が低くなってしまうと、思う通りに経営ができなくなる可能性もあるため、そうならないように経営者自身の経営方針を通せるだけの株式保有は続ける必要があります。

経営権を確保するためには、少なくとも特別決議に必要な3分の2の議決権を経営者一族で保有しておく必要があります。ただし、3分の2の議決権があれば、すべての運営が自由になるというわけではありません。

たとえば解散請求権などは、議決権の10分の1を有する株主に少数株主権が認められていますので、注意が必要です。

同族会社の間の株式譲渡にかかる税金

【株式譲渡所得課税】

株式譲渡の際に発生する税金として代表的なものは、株式譲渡を行った際に得られる株式譲渡所得に対して課税される所得税と消費税が挙げられます。この場合、株式譲渡の際に得た総収入金額を譲渡所得として計算し、定められた税率に基づいて所得税と消費税が発生します。

【法人税】

株式譲渡を行った当時者が法人だった場合は、法人税が課せられます。同族会社の場合、当該株式譲渡が同族会社による取引だったかどうかは、株式譲渡が行われた後に判断されます。

【贈与税】

株式譲渡において、取引価額が実際の株式の時価より著しく低かった場合、贈与税が課税されることになります。

気を付けておきたいのが、個人でも法人でも関係なく、著しく低い取引価額で株式譲渡を行った場合は贈与と判断される可能性が高くなるという点です。

同族株主同士で株式譲渡を行った場合は、贈与と認定される確率が高くなるため、取引価額や株式の時価の算定方法には注意を払っておく必要があります。ちなみに、株式譲渡をきっかけに借金を多く棒引きするような行為なども、贈与と見なされることもあります。

【寄附金課税】

売主が個人であり、買主が法人であった場合、時価よりも高い取引価額で非上場株式を譲渡すると、譲渡したときの取引価額と株式の時価の差額が寄付金と見なされることになります。この場合、寄付金課税の適用を受けることになります。これも贈与と同様、取引価額や時価の算定に配慮しておく必要があります。

事業承継を円滑に行うために

同族会社にとって、後継者の確保自体が大きな課題ですが、後継者候補がいるだけでは安心できません。先代の創業者の存命中は円満だった親族関係が、その死亡に伴う相続をきっかけとして紛争になり悪化するケースは少なくありません。

トラブルを回避するためには、経営者が生前に時間をかけて準備をしておくことが大切になります。もしも後継者が決まっているのであれば、親族に意志を伝え、同意を得ておくことで承継時のトラブルをなくすことになります。

【事例紹介】

72歳のAさんは親から引き継いだ中小企業の経営者で、その過半数の株を所有しています。ただ、ここ数年は病気を患い、現在は実質的には会社を長男に任せた状態になっています。自身が認知症などになる前に、できるだけスムーズに長男に事業継承したいとは考えていますが、長男はまだ経営経験が浅く、今すぐに会社のすべてを長男に任せることには不安があります。

・要点

1経営の重要な決定権は、経営者がしばらく保持していたい。

2株式評価額が4億円ですので、贈与の際の贈与税、売買の際の譲渡所得税などの税金問題。

3現状のまま認知症を発症すると経営者所有の過半数の持ち株の凍結により議決権が行使できなくなり、会社は機能不全に陥る。

・解決方法

家族信託を活用することで、コストを大幅に削減、経営者の意思を組むことにも成功しました。事業承継をスムーズに行う目的で受託者を法人にし、経営者が認知症になった場合には、法人の代表者である長男が議決権行使をするこが可能になりますので、企業経営が滞ることもありません。

同族会社における事業承継まとめ

以上、同族会社の規模が大きいほどに、円滑な事業承継を行うための準備は大変なものになります。早い段階から専門家に相談をして、準備を進めておくことをおすすめします。

同族会社における事業承継の問題をしっかりと抑え、円滑な事業承継を可能にしましょう。

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