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親族内で事業承継した二代目が会社を潰す? そうならないための方法と生前にしておく税制対策!

経営者相続で重要になるのが事業承継です。生前贈与や相続により、会社を次世代へ移します。父親が一代で築き上げた会社を事業承継した二代目が潰してしまうというのはよく聞く話です。どうすれば引き継いだ企業を潰さずにいられるのでしょうか。今回は事業承継と二代目について解説します。

中小企業に多い親族内継承

中小企業の場合、経験や力量、本人の資質など関係なく、自分の息子や娘に事業を引き継がせる親族内継承が多いです。
たとえば、現場第一でカリスマ的存在だった先代社長が死亡し、現場のことをあまり知らず、技術力もない息子が後を継いだ場合、社長室に閉じこもるか、外回りばかりで現場に顔を出さない二代目であれば社員の反感を買うことになるでしょう。

会社を立ち上げ、苦労を重ねて事業を広げていき、社員の人望を集めていた一代目の会社を、経験不足で資質もない息子や娘が引継ぎトップに立つことで事業が立ち行かなくなり、業務が回らなくなるというのは中小企業においてよくあるケースです。

一代目と二代目の違い

一代目と二代目の違いとは何なのでしょうか。
経営者として事業に携わってきた知識や経験値はいくらでも後付けできます。一代目の時の幹部の支えがあれば、そうたいした問題とは思えません。
一代目にはあって二代目にはないもの、それは自分の意思で事業を立ち上げた人間にしかないオーナーシップや志でしょう。

企業理念の言語化が重要

事業承継とは、事業だけでなく、創業の精神や理念、事業に込められた想い全てを、大切に謹んで引き受けることが求められます。
企業理念の言語化は事業承継において非常に重要です。
企業理念とは「会社や組織は何のために存在するのか」「事業経営をどんな目的でどのように展開するのか」など、組織の存在意義や使命などを普遍的な形式にて基本的な価値観を表すことです。
言葉になっていない想いは引き継ぐことはできません。そのため、一代目の胸の内を企業理念としてまとめ、文章として残すことで、世代を超えた継承が可能になります。

事業承継で重要なポイント

事業承継で重要なポイントは以下の通りです。

先代の背中を追いかけるのではなく企業理念に立ち返る

1つ目は「先代の背中を追いかけるのではなく企業理念に立ち返る」ことです。

事業を引き継いだ時、重要な決裁がある度に先代ならどうしていただろうかと悩んでしまう場合があります。
ひたすら社長を追いかけていた社員も、社長が代替わりをするとなったら目標を見失ってしまうかもしれません。
そうならないために先代ならどうするかと悩むのではなく、企業理念に立ち返りましょう。

経営理念が企業成長スピードを加速させる

2つ目は「経営理念が企業成長スピードを加速させる」ことです。

企業理念を中心においた経営を理念経営といいます。理念経営を行えば、やるべきことかそうでないかが明確となり、決済のスピードが上がります。二代目社長だけでなく、社員一人一人が理念に基づいた行動ができるようになれば、企業の成長速度も増々加速していくでしょう。

また、理念経営は新規顧客の獲得や採用においても効果があります。理念に共感するお客様の出会いが生まれると、さらに価値観や考え方、目指すべき方向性に共感する仲間との出会いが広がり、新規顧客の獲得や採用が増えます。

理念浸透には社長の本気度が求められる

3つ目は「理念浸透には社長の本気度が求められる」ことです。

理念浸透が難しいため、理念経営が実践できている企業はまだまだ少ないです。

理念浸透が難しい理由は以下の通りです。
・理念を決めたことに満足し、実際に理念浸透のための施策を行っておらず、何も行動していない
・事業が変化しても理念は創業時のままで、今の会社の現状と大きなギャップがある
・会社が従業員に対して伝える行動をしていないため、経営理念に込められた想いや背景や意味を社員が理解できておらず、経営理念が身近なものだと認識できていない

事業浸透に必要なポイントは以下の通りです。
・経営理念がなぜ生まれたのか、どんな意図があるのかを言語化し、会社から定期的にホームページなどで発信する
・経営理念について1日5分間、チーム内・従業員同士で話し合う場所を設ける
・基本的なルールや原則を記載するだけでなく、理念に対する考え方や行動指針の捉え方など、常に理念が身近に感じる為のルールブックを作成する
・社長の本気度をわかってもらう

事業承継にかかる税金対策

親族内継承時に大前提となるのは、先代は生きている間にできるだけ早く二代目へ株式を譲渡するという考え方です。
何の対策もせずに先代社長が死亡し、相続を迎えると多額の相続税が課せられてしまいます。中小企業の非上場株式は基本的に売る事ができません。それなのに高額な納税資金が発生するため、二代目は税金を払えず、相続放棄することになります。
事業承継にかかる税金対策は以下の通りです。

株式は生前贈与する

1つ目は「株式は生前贈与する」ことです。

法人の価値は株式の評価額で決定されますので、株価を下げれば贈与税と相続税を少なくすることができます。大幅な赤字計上や利益の繰り延べ対策によって内部保留を減らすなど、株価を一時的に大幅下落させて、一気に株式を生前贈与します。

生前贈与の場合、毎年110万円までであれば非課税にてお金を移行できますので、110万円分の株式を少しずつ移動させます。10年間でも1,100万円を無税で渡せますので、相続額が大きくなる場合は少しずつ贈与すると大幅な節税対策になります。口約束だけでは意味がないため、税理士などの専門家を活用しながら、書類上でも毎年株が二代目に渡っている証拠を残しましょう。

持株会社を利用する

2つ目は「持株会社を利用する」ことです。

優良企業の場合、株価が異常なほど高騰していることがあります。そうなると生前贈与の非課税枠だけではどうしようもできません。その解決策が持株会社(ホールディングス)活用です。

持株会社を利用した事業承継の流れは以下の通りです。
①二代目である子供が新会社を立ち上げる
②銀行から融資を得て、先代経営者から自社株を買い取る
③二代目が立ち上げた新会社(持株会社)が先代社長の会社を引き継ぐ
④先代社長の会社は持株会社から自社株を買い取り、その対価として内部保留利益の中から現金を渡す(金庫株)
⑤先代社長から引き継いだ会社の儲けを配当という形で持株会社へ還元し、借入金の返済資金にあてる

持株会社を活用すれば、たとえ株価が高くても高額な銀行融資を引っ張ってくることができれば事業承継が可能です。

事業承継税制を利用する

3つ目は「事業承継税制を利用する」ことです。

事業承継税制を利用すれば、一括贈与によって社長交代することで、本来であれば事業承継のときに支払わなければいけない税金を(ある程度の制約はあるものの)実質無税にできます。

兄弟が多い場合、会社を分割してそれぞれ株式を分与する

4つ目は「兄弟が多い場合、会社を分割してそれぞれ株式を分与する」ことです。

会社を引き継がせる場合、株式を分散させると法人経営がとん挫するため、後継者一人に株式を集中させます。そうなると必然的に引き継ぐ財産が不公平となります。相続人が納得してくれれば問題ありませんが、株式の値段が高額だと財産分与の割合に不平を持ち、トラブルの原因になりやすいです。

兄弟経営でうまくいく会社はほとんど存在しません。その場合、兄弟で会社を分割し、それぞれの兄弟に対して株式を分与します。

生前分与の分について遺留分も含めて考慮しておく

5つ目は「生前分与の分について遺留分も含めて考慮しておく」ことです。

遺産のトラブルとして、遺留分があります。遺留分とは法律で定められた家族に必要な最低限の相続分のことです。せっかく株式を生前贈与して後継者に集中させたのに、先代社長が死亡後、遺留分によって株式が分散し、会社経営がスムーズに回らなくなり、潰れる可能性があります。そのため、生前贈与の分についても遺留分を含めて考慮しましょう。
遺留分には例外が2つあります。

除外合意

例外の1つ目は「除外合意」です。

事前に除外合意の手続きをしておくことで、生前贈与株式を遺留分から除外できます。親族内承継をする場合、除外合意は必須です。除外合意をしておくと、どんなに株式が高額であっても親族は遺留分として請求できません。そのため、相続発生後であっても安心して会社経営を継続できます。

固定合意

例外の2つ目は「固定合意」です。

固定合意とは、先代経営者から後継者に株式譲渡した時、その時の金額で株式の評価額を固定することです。
固定合意がないと、相続時に株価上昇分も考慮して遺留分の金額が決定してしまいます。
たとえば先代社長が4,000万円で株式を贈与したとしても、後継者ががんばって株式評価額を1億円にすれば、相続時の株式1億円についても遺留分は計算されます。
その後、先代社長が現金4,000万円を持って死亡した場合、1億4,000万円の遺留分金額を請求され、多くの自社株を取られてしまいます。そのため、必ず事前に固定合意をしておきましょう。

まとめ

事業承継と二代目について解説してきました。以下、まとめになります。

・中小企業の事業承継で一般的に多い手法は親族内承継
・一代目にあって二代目に欠けているものは、自分の意思で事業を立ち上げた人間にしかないオーナーシップや志
・二代目社長が失敗しないようにするには言語化された企業理念に立ち返って理念経営を行い、社員や顧客に理念を浸透させることで企業の成長を加速させる

事業承継には、相続する税金対策と事業や理念を承る覚悟が必要です。株式が事前に手続きをしていなかったせいで分散すると法人経営は頓挫してしまいます。また、経営幹部や現場社員の支えがなければどんなに二代目社長が優秀な人物でも経営はうまくいかないでしょう。社員一丸となって企業の成長を加速させるには、企業理念が重要となります。
常に先手を打ち、経営の根幹である企業理念を言語化、浸透化していくことで、二代目社長の悩みは少しでも解決されるのではないでしょうか。

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