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事業承継への老害被害に後継者は苦しめられる! 老害を防ぐための対策と実例を紹介!

社長の平均年齢が60歳を超えている中で、体力や気力の限界を感じて事業承継を考え始めている経営者は近年急増しています。しかし、退任のタイミングや引き際を自分で決めるというのは非常に難しいです。
悩んでいる内に、ワンマン社長として強力なリーダーシップを発揮しているつもりが、「老害」になっている事例は少なくなりません。老害は名門企業を破綻の道へと誘い、事業承継にも悪影響を与える可能性があります。今回は事業承継と老害について解説します。

老害とは

老害とは、能力の衰えた高齢の創業者や代表取締役がトップに居座り続け、世代交代が進まないなど、社会や組織の中で活動の阻害をする際に使われます。
70歳を過ぎると老害は誰にでも訪れるため、大企業の多くが社長も含めた役員定年を70歳に設定しています。

事業承継における老害の被害

「老害」の発言・行動は以下のように、それが会社を害している事を本人が気付かないためにたちが悪いです。

・会議での話が長くなる
・昔話が多くなる
・自分の誤りを認めない、などの行動が目立つようになる
・環境の変化に鈍感になり、昔の成功体験にこだわって現在の環境に対応する新しい方法が受け容れられず経営に悪影響を及ぼし、経営者自身が会社の足かせになる

事業承継における老害の被害は以下の通りです。
・自分で後継者を指名しておきながら、無意識に発する言葉が後継者の内外の信用をおとしめ、後継者は会社にいられなくなり、辞めてしまう
・新しく選んでも、次の後継者も同じ目に合い、再起不能になる
・社長交代を発表しながらも、いざそのときになると、ずるずると先延ばしする
・事業承継後も会長として指示を出し続ける

その他老害における事業承継の被害

老害における事業承継の被害は、経営への口出しや後継者の追い出しだけではありません。

財政状況を把握していない

1つ目は「財政状況を把握していない」ことです。

老害が発生している多くの会社は手作業で会計を行っています。かなりの売上があるにもかかわらず、会計担当の事務員も高齢化し、コンピュータが使えないため預金通帳で経営状態を判断しているのです。
そうなると財政状況が把握できず、毎月の借金支払い、毎月の手形の引き落としができれば経営ができていると勘違いしてしまい、借金が常態化し、売り上げに近い借金を抱え込んでいることがほとんどです。後継者は親に言われて連帯保証人になっていますが、会計状態は明らかにされていません。そのため、いざ事業承継を行って初めて、借金がどうにもならないところまで来ていることを知ります。

若い後継者に冒険をさせない

2つ目は「若い後継者に冒険をさせない」ことです。

多くの大手取引先は常に利益を追求する合理的な体制ができあがっています。大手に依存している中小企業は常に別の分野の取引先開拓を進め、大手の心変わりに備える必要があります。
しかし、老害の経営者は新分野開拓への投資をさせず、長い人間関係でできあがってしまった顧客や一部大手との信頼関係など、安定した関係が大切になって若い後継者に冒険をさせません。

何でも経費で落ちると勘違いしている

3つ目は「何でも経費で落ちると勘違いしている」ことです。

老害経営者は何でも経費で落ちると勘違いし、会社の私物化を行い、自分が会社を食い物にしていて、会社を潰すことになると気づいていない場合があります。この場合、会社の株を握られていると是正がかなり難しくなります。そのため、少しずつ変えていくか、クーデーターを起こす必要があります。どちらにしても税理士や弁護士と相談しつつ方針を決めていくしかありません。

ある経営者の老害例

当時70歳だった経営者は、子どもがおらず親戚にも事業承継を断られたため、業務知識もあり、管理職としての知見も高く、業務能力も十分な、当時38歳のサラリーマンだった後継者を3年かけて引き抜きました。

その後、後継者が入社した時に株式の34%を買わせようとしましたが、彼はサラリーマンだったので株式購入資金が手元にありませんでした。
そのため、事業承継に必要な株式買い取りの資金(M&A、継承のための特別費用)を賄う事業承継別枠資金が融資される「経営承継円滑化法の金融支援」を受けることにしました。
それから10年かけて分割払いを受け取り、最終的には死亡時遺贈契約書を記入するという、事業承継計画書を作成したのです。

信頼関係や取引の信用を従来通りに取り付ける、後継者の教育や業界への顔繋ぎは今後の営業を楽にするため、経営者としての最後の重要な仕事です。
前経営者は最善をつくしましたが、後継者が新社長として自他共に認められトップとしての機能を立派に果たし始めると、何とも言えない「焦燥感のような思い」に襲われました。

すると前経営者は態度を一変させ、後継者のやり方に異を唱え、邪魔をする、勝手に従業員に命令する、取引先に一人で出かけて愚痴を言ったりするなどの経営への手出し、事業承継の阻害行為である「老害」を行うようになったのです。

カリスマ経営者のようになるのは難しい

後継者に自分が手塩をかけて育てた会社をあげる行為は「奉仕の心」と「哲学的な達観」、「私欲に流されないという強い覚悟」が必要になります。

経営者の評価軸は業績であり、株式市場もそうした姿勢を評価しています。
常に会社のことを自分事として捉え、先読みしつつ次の一手を考え、実行できるのが経営者です。

しかし、人間は万能ではなく感情を持った生き物ですので、誰もがカリスマ経営者のようになれません。業績が悪化しても経営者の椅子にしがみつき、権力をふるい続け、いつしか会社を私物化してしまうのです。

老害にならないための解決方法

解決方法は、引退後の人生設計を行うことです。
たとえば、研究所や一般社団法人や特定非営利活動法人(NPO)を設立する方法など、今までのように経営者としての責任感や利益追求の義務感から少し離れて、社会貢献を大きな目的に働く場所を探しましょう。

また、私欲に流されないカリスマ経営者の覚悟を、仕組みとして会社の中に組み込むことも重要です。
環境の変化を的確に捉え、会社にとってどんな変革が必要かを客観的に判断できる「変化に強い人材」、つまり、老害になることなど考えもしない人材を初めから育てることができ、健全なリーダーシップを発揮できる環境ならば、老害経営者は現れないのではないでしょうか。

引退した後に「あの社長は立派だ」といわれる人は、引退後にはオーナーとして経営陣を支援はするが、日常の経営には口出ししないものです。引退後も忙しく動き回ってはいるが、地域の慈善活動や業界全体を育成する活動に献身しています。

権力や地位を失ってしまうと周りから相手にされなくなってしまうという危機感が生まれ、会社にしがみつくことは「老害」を引き起こします。
私欲に流されないカリスマ経営者の覚悟が組み込まれた仕組みや人材作りを会社の中に作り、退職後は新しい自分の世界を作って活動範囲を広げ、人の役に立つ充実感を得ることで「老害」から「老益」にしていきましょう。

老害を生まないよう企業が実際に行った対策例

老害を生まないよう企業が実際に行った対策例は以下の通りです。

就任期限を定め、社長指名諮問委員会が社長にふさわしいか判決を下す

1つ目は「就任期限を定め、社長指名諮問委員会が社長にふさわしいか判決を下す」です。

オムロンでは社長任期10年間中、社長指名諮問委員会によって社長にふさわしいかの判決が下されます。諮問委員会は取締委員会の下にある4つの委員会の一つであり、その業務が会社の利益に基づいて進められているかを客観的な立場で監督します。
オムロンでは取締役の過半数を「業務執行を担当しない取締役」としており、3人の社外取締役と社内の2人の5人で構成されています。客観性を担保するため、業務執行の取締役は社長指名諮問委員会のメンバーには入れない方針です。

合格ラインは、会社としてどうありたいかの目標を定め、そこへ向かって引退する10年後までしっかり企業経営ができているかどうかです。不合格なら別の社長を選びます。

人間は自らの引き際に気づきにくいので、他人が本人にそれを告げられる仕組みをあらかじめ組織に組み込んでおかなければいけません。たとえば、あまりに強い社長がいると他の取締役は押し切られ、社長の暴走を止める仕組みが必要となります。

また、想定外のイベントが起きたときにどうするかを事前に考えておくことも重要です。たとえば、社長の健康問題や不慮の事故などだけではなく、2期連続で赤字になったら社長交代など、具体的な指標を決めておく必要があります。社長は辞めても次の人生が待っていますが、会社は危機に陥ったら次はないからです。
オムロンの社長指名諮問委員会はそういった社長の暴走や想定外のイベントを食い止める機能を果たし、社長に与えられる時間は10年間と期限を定め、社長にふさわしいか判決を下し、老害になる前に社長を降ろすことで会社を守ります。

65歳で強制退場の仕組み作り

2つ目は「65歳で強制退場の仕組み作り」です。

家電量販店のケーズデンキで知られるケーズホールディングスの加藤修一氏(72)は1982年、創業者の父から事業承継され、2代目社長に就任しました。
2011年に会長になるまでの約30年間会社を率いてケーズデンキを大手家電量販店に育て上げました。

加藤氏は「全ての社長は65歳で社長を後任に譲り、70歳で会長も退く」という内容を内規に組み込み、老害を発生させないために65歳で強制退場の仕組みを作り上げました。

その仕組み通り、加藤氏は65歳になって社長を退き、70歳を機に会長も退いて相談役となり、その後相談役も退いて「元ケーズの人」となりました。

まとめ

事業承継と老害について解説してきました。以下、まとめになります。

・老害は誰にも訪れるため、多くの大企業が社長を含め役員定年を70歳に設定している
・老害の前経営者から事業承継した後継者は大変な苦労を強いられる場合がある
・老害にならないためには、引退後の人生設計を行い、私欲に流されず変化を的確にとらえ客観的に判断できる人材をはじめから育てる環境作りが重要

老害は70歳を過ぎれば誰にでも訪れます。年齢を重ねると供に守りに入り、やらなくてはいけないことが分かっていても変化への対応を考えただけで煩わしくなり、頑固になって社内改革を経営者自身が阻んでしまいます。人間は感情で動く生き物です。そのため、自分が老害になる前に後継者を見つけ、事業承継を行い、引き際を決めましょう。そのためには事業承継前に、引退後の人生設計を行い、老害になる可能性がゼロに等しい人材を育てる環境づくり、体制を整えておきましょう。

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