事業承継がうまくいかない理由とは? 事業承継を成功に導くための4つの対策!
中小企業にとって経営者の高齢化が進み、後継者への事業承継は会社が生き残るための手段といえるでしょう。しかし、事業承継を進めていく内に先代経営者や後継者が想定外のダメージを受けてしまう場合もあり、必ずしも良い結果にたどり着けるわけではありません。トラブルは事業承継計画を立てる段階では気づきにくく、事業承継がうまくいかない可能性もあります。今回は事業承継がうまくいかないことについて解説します。
事業承継がうまくいかない時の大ダメージ
兄弟や子ども同士など、法定相続人の相続トラブルや承継後の資金繰りに追われた後継者によって会社の業績が一気に悪化する、退職者が増加して会社が回らなくなるなど、事業承継が思うように進まなかった影響を受け、廃業となる可能性もあります。
これまで時間をかけて築き上げてきた会社、事業すべてを失うという大ダメージを負うことになります。
事業承継を失敗に導く要因と行動は非常に多いため、大ダメージを負わないように事業承継に潜むリスクを徹底的に理解し、各リスクへの対策を考えた承継計画を立てましょう。
同族経営会社の事業継承がうまくいかず倒産・廃業する要因
中小企業の場合、経営者の身内が会社を継ぐケースが主流ですので同族経営が多く、以下の要因によって廃業や倒産してしまうことは少なくありません。
事業承継に対する経営者の真剣度が低い
1つ目が「事業承継に対する経営者の真剣度が低い」ことです。
中小企業にとって事業承継は生き残りをかけた戦いの一つです。
しかし、同族経営会社のようにすでに後継者がいる場合、事業承継を経営者がイベントとして認識し、焦りを全く感じていないことがあります。経営者の事業承継に対する真剣度が低くなると、準備不足状態でいきなり事業承継の必要性が迫られることになります。
そうなると、身内や会社の人間に事業承継の計画が伝わりにくくなり、事業承継に関して自社の抱えている問題点が見えづらくなります。また、身内を会社に入れただけで後継者ができたと錯覚してしまうなどの悪影響を会社に与えるでしょう。
後継者に必要なスキルが備わっていない、従業員が状況を理解していない状態で事業承継を進めたとしても会社経営がうまくいかず、廃業や倒産に結びついてしまいます。
経営者が周囲の人間を信頼していない
2つ目が「経営者が周囲の人間を信頼していない」ことです。
経営者が会社を育て上げてきた自信から、周囲の人間を信用できない行動も事業承継がうまくいかない要因になります。子どもには任せられない、大事な取引先は自分が引き続きかかわるなど、取締役に経営者自身とその配偶者のみ配置し、他者が経営に携われないような環境下では後継者が育ちません。
特に会社への愛着が強い、一代で会社を築き上げてきた経営者は、会社の属人性が強くなります。そうなると世代交代が進まないだけでなく、新しい戦略やマネジメント方法を取り入れることも難しくなるので注意が必要です。
突然経営者が倒れる
3つ目が「突然経営者が倒れる」ことです。
経営者の中には事業承継の準備をせずに、生涯現役をポリシーにしている人もいます。
事業承継をスムーズに行うためには、生涯現役のポリシーは障害でしかありません。事業承継の準備が全くできていない状態で経営者が倒れた場合、従業員や取引先に多大な迷惑をかけてしまうからです。一時的に取引が途絶えたことで取引先との契約を失い、今後の経営に不安を感じた従業員が一気に離職する可能性があります。また、誰を後継者にするかで身内同士が争うかもしれません。世代交代はできてもスキル的に未熟な人物が後継者になる可能性もあります。
事業承継の準備をせずに経営者が倒れると、このように様々なリスクが襲い掛かり、一気に会社の経営が傾いてしまうでしょう。
事業承継がうまくいかなくなる行動
同族会社だけが事業承継でうまくいかなくなるわけではありません。能力やスキルを重視した経営陣が組織をまとめている企業でも、以下のように行動の仕方を間違えれば事業承継に失敗してしまいます。
資金問題を隠す
1つ目は「資金問題を隠す」ことです。
後継者に苦労をかけたくないという思いからお金に関することを周囲に隠し、事業承継までに経営者が一人で解決しようとする場合です。資金面の問題はそう簡単に解決できるものではありません。もし、事業承継が終わった時点で資金難が判明すると、後継者にとって非常に大きな負担となるでしょう。
返済状況やキャッシュフローなど、会社のお金に関することは正確かつ迅速に伝えることが重要です。資金問題は対応が少しでも遅れると取り返しのつかないことになります。後継者も含めて早いタイミングで相談、対策を練れば、今後の選択肢を増やすことができ、後継者も資金難状態で承継することへの覚悟が生まれます。
失敗を恐れすぎる
2つ目は「失敗を恐れすぎる」ことです。
人間は失敗やミスを繰り返して成長していく生き物です。それは会社を背負うことになる後継者も同じであり、ある程度失敗を経験しておくことで効率的に経営スキルを身に着ける事ができます。
経営者が失敗、ミスを恐れすぎると、後継者に対して重要な仕事を任せられなくなり、失敗を経て身につける最低限の経営スキルがない状態で次期経営者になってしまいます。そうなるといつか深刻なトラブルを引き起こしてしまうでしょう。
後継者には早い段階で失敗、ミスを経験させ、その原因を自分で考えさせることによって経営スキルや問題解決能力を伸ばし、自信へと繋がるよう経営者は教育しましょう。
先代経営者がことあるごとに口をはさんでくる
3つ目は「先代経営者がことあるごとに口をはさんでくる」ことです。
事業承継が終わった後、先代経営者は基本的に口出しをしません。現場の意思決定権は基本的に現経営者にあります。何かあるごとに先代経営者が口出しをしていると、後継者の甘えに繋がって成長を阻み、周囲の従業員は「現経営者は判断力が乏しいのでは」と不安になるからです。その結果、従業員の離職に繋がりかねません。
時にはサポートが必要かもしれませんが、基本的には現場に任せる姿勢で事業承継に望みましょう。
誰にも相談しない
4つ目は「誰にも相談しない」ことです。
誰にも相談せずに事業承継を進めると、間違いなく周囲の人間の混乱を招きます。事業承継をスムーズに進めるには、身内や後継者、従業員など多方面からの理解が必要です。
会社が深刻な経営課題を抱えている場合や事業承継手段としてM&Aを選ぶ場合は早めに専門家へ相談し、ベストな方法で事業承継を進めるために対策をじっくりと話し合いましょう。
従業員一人ひとりに相談する必要はありませんが、事業承継は多方面と相談しながら進めるべきですので、適切なタイミングで後継者のこと、今後の経営方針などを従業員に説明する場を設ける事も必要です。
事業承継を成功に導くための対策
事業承継を成功に導くための対策は以下の通りです。
従業員は現経営者と方向性が同じであることを気づかせる
1つ目が「従業員は現経営者と方向性が同じであることを気づかせる」ことです。
従業員にとって経営者が変わることに戸惑ってしまう従業員もいるでしょう。
その影響で後継者と従業員とのコミュニケーション問題が非常に多く、これを放置すると会社の組織力や団結力が次第に失われて行きます。
その対策として、従業員に「ともに会社の発展を目指し、同じ目標に向かっている意識」というようなアプローチをかけ、従業員は現経営者と方向性が同じであることを気づかせ安心感を与えましょう。この方法は円滑なコミュニケーションのための第一歩として実践することをオススメします。
ブレない軸をつくる
2つ目が「ブレない軸をつくる」ことです。
経営理念は経営者のイメージにつながるため、重要なマーケティングツールのひとつとして、場合によっては先代が掲げたものに変更を加えることも必要です。ひとつの単語をかみ砕いたり、言い回しを少し変えたりするだけで、経営理念から受けるイメージは変化します。先代の想いを捻じ曲げずに後継者の考えにぴったりな経営理念へと変更すれば、今後経営を続けるうえでブレない軸を作り上げることができます。
他社で後継者に経験を積ませる
3つ目が「他社で後継者に経験を積ませる」ことです。
後継者が他者で社会人としての基本的マナーやスキルを身に着けることで、自社では許されないミスや失敗も経験でき、事業承継に先だって非常に効果的です。
外部にしかない人脈を築く、自社にはない企業文化や技術を学ぶといった社会人経験は他社でしか積めません。後継者のスキル不足で悩んでいる経営者は、選択肢のひとつとして検討することをオススメします。
専門家に相談する
4つ目が「専門家に相談する」ことです。
事業承継は会社の存続をかけた経営戦略の一つですが、様々なリスクが潜んでおり、世代交代を図れるからといって安易に取り組むべきものではありません。
親族内の争いなどトラブルに発展させないために贈与税や相続税といった税金対策が必要です。「相続時精算課税制度」や「不動産購入による自社株の評価額引き下げ」などの節税対策も事前に確認することで、納税で資金が底をつき、事業承継がうまくいかなくなるといったリスクを回避することができます。
事業承継を実施すると思わぬリスクが発生する可能性が高いため、自分達の力だけでは難しいと感じた場合、早い段階で専門家に相談しましょう。
まとめ
事業承継がうまくいかないことについて解説しました。以下、まとめになります。
・事業承継は会社の生き残りをかけた経営戦略の一つですので、うまくいかないと倒産・廃業する可能性が高くなる
・先代経営者が後継者を育てず経営に口出しばかりしていると、後継者を頼りないと思った従業員が離反していき、倒産・廃業に繋がる
・後継者を育ててスキルアップを図り、従業員と後継者が同じ方向性を向いていることを伝え、ブレない軸をつくることで事業承継はうまくいく可能性が高くなる
経営者が一人で事業承継を進めるには限界があります。事業承継を成功させるためには、失敗してしまう原因を知ったうえで対策を行うのが良いでしょう。自分達で解決できない場合は専門家などのプロに相談してアドバイスをもらい、事業承継を円滑にいくようにすることをオススメします。