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事業承継とクラウドファンディングの関係性とは?種類の特性をうまく利用すれば相乗効果あり!

事業承継とクラウドファンディング

従来、会社経営のための資金調達手段は金融機関を通じた融資や投資家による投資などが一般的でした。しかし、近年は資金調達の手段や可能性が多様化し、特にクラウドファンディングを活用した資金調達が広がっています。クラウドファンディングは、会社にとって資金調達手段としてだけでなく、事業承継とも関係あるものとなりつつあります。

クラウドファンディングとM&A・事業承継はどのような関係性なのでしょうか。今回は中小企業者の新たなチャレンジを応援するクラウドファンディングと事業承継について解説します。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディング(crowdfunding)とは群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語であり、ソーシャルファンディングとも呼ばれています。

通常、公募時に掲げた目標や目的を達成するための資金を調達したいヒトや企業に対して、共感した不特定多数の人が資金や協力などをインターネット経由で投資する仕組みを指します。

投資してもらったリターンとして、ヒトや企業は掲げた目標で出来上がった商品やサービス、体験を支援してくれた不特定多数の人達にお返しします。

現在、日本国内では以下のような幅広いプロジェクトが実施されています。

  • 途上国支援や商品開発
  • 芸人による地域創生プロジェクト
  • 自費出版による絵本の制作など

日本国内では「CAMPFIRE」「Makuake」「Readyfor」などが有名です。

クラウドファンディングを実施する上で重要な点

クラウドファンディングを実施する上で重要な点は以下のとおりです。

  • 起案者は変革を与えたい事業をわかりやすく正直に書き込むこと
  • 共有を得ること
  • 資金集めだけを目的にしない

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングは、仕組みや支援者のニーズによって以下のような種類に分類できます。

融資型

1つ目は「融資型」です。

融資型は複数の支援者から資金を募ることで借り手企業に融資する形式のクラウドファンディングです。

  • 支援者の投資に起案者が返済することが前提
  • ソーシャルレンディングとも呼ばれている
  • 一般的に、利回りが決定していて支援者は利回りをリターンとして受け取る仕組み
  • 支援者にとっては大きな元手がなくても投資がしやすく、日々の値動きを気にすることなく投資できる手段
  • ただし、借り手企業が返済できない場合投資した元本が戻ってこない

寄付型

2つ目は「寄付型」です。

寄付型は資金を集めて寄付する形式のクラウドファンディングです。

  • 起案者も支援者も社会貢献が目的
  • 環境保全や被災地の支援などの思いに共感した人から資金を募る
  • 基本的にはリターンはない
  • 支援金は寄付金控除などの税制優遇の対象になる

購入型

3つ目は「購入型」です。

購入型は支援者がリターンとして支援金額に応じた商品、もしくはサービスを受け取る形式のクラウドファンディングです。金調達というよりは「事前購入」という性格が強く、主に2種類に分けられます。

  • All or Nothing型:起案者の設定した金額に到達した場合にのみプロジェクト遂行。達成しなかった場合、支援者はお金を払うことはなくリターンもない
  • All In型:希望金額に到達しない場合でもプロジェクトが遂行される

株式投資型

4つ目は「株式投資型」です。

株式投資型は起案者が個人ではなく株式会社という特徴を持ち、以下のような形式のクラウドファンディングです。

  • 支援者:出資することで起案者企業の未公開株式を受け取る
  • 起案者:事業で得られた配当が収益

株式投資型には、他のクラウドファンディングにはない、以下のような投資家保護の観点からかけられた制限があります。

  • 1企業につき年間調達総額が1億円未満
  • 投資家ひとり当たりの年間投資額50万円以下に限定
  • ただし、金融商品取引法上の特定投資家は対象者ではない
  • IPOやM&Aに至れば、その分リターンも大きくなる投資だが、その分時間がかかる
  • 上場株式に対する投資よりもハイリスク
  • 手数料がかかる(審査料だけで約10万円、クラウドファンディング実施時には株式発行額の10~20%相当など)
  • エンジェル税制が適用される場合がある

上記の制限は今後も投資家や企業のニーズに合わせてルール変更する可能性があります。そのため、株式投資型で資金調達を検討する際は、法律の改正や規制の変更や計算に気をつけておきましょう。

M&A・事業承継検討経営者から見たクラウドファンディングへの捉え方

様々な種類が存在するクラウドファンディングですが、M&A・事業承継においてはどのように捉えるべきでしょうか。M&A・事業承継を検討する経営者の立場から考えたクラウドファンディングへの捉え方は以下のとおりです。

  • 融資型借入であることを意識して、他の金融機関の条件なども比較して活用を検討する必要がある
  • 寄付型・購入型:事業承継の後継者が新事業展開を企画する中でテストマーケティング利用に有効。借入金が増えたり、株主が増える訳ではなく、先に事業の原資を集めることで展開事業にどの顧客層が関心を持つかを把握できる
  • 株式投資型:金融商品取引法の規制があるので株主が小口化・分散化しやすく、売却に小口株主の同意が必要。そのため、株主が増えるとM&A・事業承継がスムーズにいかず、現実的に考えて利用は困難

クラウドファンディングと事業承継・後継者の関係性

クラウドファンディングと事業承継・後継者は一体どのような関係性があるのでしょうか。それは、「お互いの特性を活かし合い、メリットを生み出している」ことです。

事業承継時に後継者がクラウドファンディングを行うメリットは以下のとおりです。

  • 引き継いだ事業・サービス・先代の技術をどのように変革したいのか後継者がしっかりと伝えることで、多くの支持者を募ることができ、企業の推進力につながる
  • 先代から引き継いだ思いなどの企業理解を行うことで支援者だけでなく、社員からの共感を生み出すことができる
  • 支援者とコミュニケーションをとることで、変革ポイントについて意見や改善施策など、後継者が気づけなかったことを多角的に指摘してもらえる
  • その土地にゆかりのある人や思い入れのある人などから支援を受けることで市場拡大し、全国市場へのチャンスにつながる
  • クラウドファンディングによって新たな資金で事業変革を行うことで、事業承継・後継時に後継者が一から社員の信頼を獲得できる

クラウドファンディングを活用した中小企業などへの補助金

クラウドファンディングを活用した中小企業などへの補助金を出している自治体もいます。

広島県竹原市役所は、新型コロナウイルス感染症の影響により変化する社会経済に対応するため、クラウドファンディングを活用した新たなチャレンジをする中小企業などへの補助金を交付しています。

補助金額

補助金額は手数料補助金とプロジェクト応援金の合計額となります。1,000円未満の端数は切り捨てです。

手数料補助金 仲介事業者の利用料額、上限40万円
プロジェクト応援金 資金調達した額の2分の1、または支援者数に10,000円を乗じた額のいずれか低い額。上限100万円。外部有識者を交えた審査委員会で選定されたプロジェクトに対して支給

 

補助対象者

補助対象者は以下のいずれかに該当する者です。

  • 市内に事業所、本店または住所を有する者のうち、資本金額もしくは出資総額が10億円未満または常時使用する従業員の数が2,000人以下法人または個人事業主
  • 2023年2月28日までに上記へ該当する見込みがある新規創業者

補助対象事業と検討の際の注意点

補助対象事業とは、2022年4月1日以降にクラウドファンディングを開始し、2023年2月28日までにクラウドファンディング仲介事業者からの入金があるプロジェクトのことです。

検討する際、下記のことに気をつけましょう。

  • クラウドファンディングの終了から入金までには、2~3か月かかる
  • 同一申請者からの申請は1回限定
  • 補助金の交付額が予算額に達し次第終了

補助金申請の流れ

補助金申請の流れは以下のとおりです。必要な申請の書類などは市役所ホームページからダウンロードできます。

  1. クラウドファンディングの開始後30日以内に関係書類を添えてプロジェクト指定申請書を提出(2022年4月28日までに開始した場合は、2022年5月27日まで)
  2. プロジェクトの指定後にプロジェクトの内容を変更または中止した場合は届け出る(All or Nothing方式で目標額に達しなかった場合を含む
  3. クラウドファンディング仲介事業者からの入金後30日または2022年2月28日のいずれか早い日までに関係書類を添えて補助金申請書を提出

参照:竹原市役所HP「クラウドファンディングを活用した中小企業者の新たなチャレンジを応援します」(https://www.city.takehara.lg.jp/soshikikarasagasu/sangyoshinkoka/gyomuannai/6/3/1/crowdfunding.html)

まとめ

クラウドファンディングと事業承継について解説してきました。以下まとめになります。

  • クラウドファンディングとは、公募時に掲げた目標や目的を達成するため資金調達したいヒトや企業に対して、共感した不特定多数の人が資金や協力などをインターネット経由で投資する仕組み
  • クラウドファンディングと事業承継・後継者は、お互いの特性を活かし合い、メリットを生み出している関係にある
  • 株式投資型クラウドファンディング資金調達しやすい手段だが、M&A・事業承継での利用は現実的に困難

クラウドファンディングは様々な種類があり、後継者は事業承継時に上手に利用すれば支援者と社員の共感を掴んで企業の推進力を上げるだけでなく、気づけなかった改善意見や市場拡大につながる可能性があります。自治体によっては竹原市のようにクラウドファンディングを利用した補助金制度を実施しているところもあるので、一度挑戦してみる価値はあるのではないでしょうか。

しかし、どの種類を選ぶかによって向き・不向きがあるので、メリットとデメリットを把握した上で自社に合うものを選びましょう。M&A・事業承継を検討している方はぜひ、この機会にクラウドファンディング利用も検討してみてはいかがでしょうか。

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