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パン屋の事業承継は難しい? 経営者高齢化と後継者不在を抱えるパン屋の新たな事業承継の選択肢M&A!

パン屋などの飲食店は競争率が激しく、店を存続させるためには圧倒的な差別化が求められます。さらにパン屋の事業承継は特殊です。一般企業なら経営を引き継ぐだけですが、パン屋の場合、パン職人としての腕や技術を承継しなければいけません。その分、難易度は高く、かつ経営者の高齢化により後継者探しが非常に難しいというのが現実です。
現状打破のためM&Aによる事業承継を活用するパン屋が増えてきています。今回はパン屋の事業承継について解説します。

事業承継は深刻な問題になっている

パン屋に限らず、全国的に事業承継は深刻な問題となっています。
帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年11月発表)」によると、全国の後継者不在率は2020年時点で65.1%と高水準でした。この結果から、事業承継への備えが追いついていない現状が伺えます。

社長の平均年齢は60.2歳

帝国データバンクの「全国社長年齢分析」によると、社長の平均年齢は60.2歳(前年比+0.2歳)でした。
都道府県別では以下のようになっています。

・秋田県:平均62.2歳(全国平均+2.1歳)
・岩手県:62.0歳(全国平均+1.9歳)
・青森県:61.8歳(全国平均+1.7歳)

事業承継移行期間は3年以上かかる

帝国データバンクは「事業承継に関する企業の意識調査(2021年8月18日~31日、調査対象は全国2万4,458社、回答率45.7%)」を行いました。

その結果、事業承継に対しての移行期間を聞くと3年以上かかると答えた割合は51.9%でした。事業承継移行期間に対し、企業の半数が3年以上と答え、企業規模別では、小規模企業が高水準であり、全体の割合(51.9%)を上回っています。
また、2020年に新型コロナウイルスが流行し、企業の事業承継への意識に変化があったか調査した所、新型コロナの影響で事業承継への意識が変化した企業は8.7%と低く、特に影響はなかったようです。

2つの調査結果からわかること

2つの調査結果から、全国の経営者平均年齢は60.2歳であり、企業規模関係なく事業承継には3年以上かかると考えていることがわかります。

経営者の平均引退年齢は70歳前後とされますので、後継者の育成期間を踏まえると、60歳ごろには事業承継の準備を始めるのがいいと考えるかもしれません。しかし、実際に後継者へ引き継ぐまでには3年から10年はかかるとされており、後継者自体が見つからないという場合もあります。

そのため、後継者探しや後継者教育、引継ぎなどを考えると、50代にはスタートした方が良いでしょう。事業承継は遅すぎて困る事はあっても、早すぎて困ることは少ないです。経営者が高齢になってから事業承継を考えるのではなく、早めに動きましょう。

パン屋の事業承継に立ちはだかる課題

全国の企業で事業承継は深刻な問題となっていますが、それは個人経営や小規模経営のパン屋でも同じです。どんなに地域から人気があって評判も売上も良いパン屋でも、事業承継ができなければ閉店してしまいます。パン屋の事業承継において立ちはだかる課題は以下の通りです。

後継者がいない

1つ目は「後継者がいない」ことです。

パン屋が事業承継を行う場合、多くは以下の方法を取ります。
親族承継:子供や配偶者などの親族を後継者にする
社内承継:従業員を後継者にする

パン屋の一番の後継者候補は経営者自身の子どもです。しかし、現代の多様な価値観の影響を受け、経営者の子どもが親の仕事の後を継ぐという考えを持っていない可能性があります。
兄弟が多い場合、後を継ぐという子が出てくるかもしれませんが、少子化の影響を受けて子どもが一人しかいないという家庭は多いです。その一人が後継者を拒否すれば、親族承継は不可能になってしまいます。

また、社内承継ですが、パン屋は大抵小規模事業者ですので、従業員がそれほどいません。その中から後継者を見つけるのは難しく、自分の代で廃業しようと後継者探しを諦めてしまう経営者も少なくありません。

事業承継に準備がかかる

2つ目は「事業承継に準備がかかる」ことです。

後継者が見つかったとしても、育てるのに時間がかかります。
自分の子どもが後継者の場合、パン屋の経験がなければ経営に関する業務を教えながら、パン作りの技術から教える必要があります。
従業員が後継者の場合、パンを作る技術はあるので経営者としての経営業務教育が必要となります。
どちらが後継者であってもすぐには事業承継ができないため、早めに事業承継の準備を進め、スムーズに承継ができるよう計画を立てておきましょう。

経営者の高齢化

3つ目は「経営者の高齢化」です。

パン屋の事業承継の場合、経営者としての資質とパン職人としての技術の承継が必要となります。そのため、後継者探しは難航であり、パン職人はほとんどが経営者です。
パン職人である経営者は体力が続く限りパン屋を継続していこうという考えが強く、結果的に高齢になっていきます。
経営者でありながらパンを焼く準備のため、午前4時頃から仕事場に入り、現場の第一線でパンを作る作業には、体力的な問題が発生します。
経営者が高齢化してしまうと、その仕事量を継続していく難易度は上がっていきます。そのため事業承継ができていないパン屋は、経営者の体力の限界による引退や急逝によりパン屋を閉店しなければいけないというケースは少なくありません。

パン屋の事業承継におけるもう一つの選択肢「M&A」

少子化で親族に後継者がいない、小規模により従業員から後継者を探せない。経営者も高齢化していき、体力の限界を感じ始めている。そういった問題から事業承継が難しいパン屋に残された道は廃業・閉店しかないのでしょうか。

パン屋の事業承継におけるもう一つの選択肢、それはM&Aによる事業承継です。M&Aでパン屋を売却し、外部の個人または法人が後継者になる方法です。
自分の店を持ちたいと考えて現在パン職人をしている個人や、すでに複数のパン屋を経営してパン職人などの人材がある法人など、パン屋の経営に興味のある個人や法人に自分のパン屋を買い取って貰います。そのままパン屋を続けていってもらえば事業承継となります。

パン屋・ベーカリーのM&A・譲渡・売却事例

パン屋・ベーカリーのM&A・譲渡・売却事例を1つ挙げます。
最寄り駅から徒歩20分の場所に店舗を構えていた東京都府中市にあるベーカリーで、地上一階・17.5坪の広さで3年間、営業を続けていました。しかし、人手不足のため、ベーカリーを始めたい同業者の買い手に売却価格40万円で店内の造作を残したまま店舗を譲り渡しました。

パン屋のM&Aを利用した事業承継の流れ

パン屋のM&Aを利用した事業承継の流れは以下の通りです。

公的事業承継支援をしている所へ相談しに行く

1番目は「公的事業承継支援をしている所へ相談しに行く」ことです。

現在、中小企業の廃業をなくすために、国や自治体による公的な事業承継支援が実施されています。最寄りの商工会や取引銀行、役所などがその窓口となっていますので、行きやすい場所を訪ね、後継者問題の相談をしてみましょう。

たとえば、各都道府県には「後継者人材バンク」という制度がある事業引継ぎ支援センターが設置されています。後継者人材バンクとは、事業の引継ぎ希望者登録制度です。ここに相談すれば、候補者を紹介してもらえます。
ただし、そう都合よくパン屋の事業承継希望者がいるわけではありません。候補者の中に運よくいたとしても、お互いの求めるものが合致しない場合もあります。

もし巡り合えなかった場合、事業引継ぎ支援センターから民間のM&A仲介会社を紹介されます。民間のM&A専門会社は事業引継ぎ支援センターとは違う情報網を持っていますので、新たに後継者が見つかる可能性が高くなります。

近県・地元中心の地域情報に精通していて確かな実績がある会社を選ぶ

2番目は「近県・地元中心の地域情報に精通していて確かな実績がある会社を選ぶ」です。

M&Aは上場企業に限らず、中小企業や小規模事業者の間でも広く行われるようになりました。そのため、世の中にはたくさんのM&A仲介会社ができたため、事業引継ぎ支援センターで紹介されても、M&Aなど初めてのパン屋にとっては、どのM&A仲介会社を選べばいいかわからないでしょう。
M&A仲介会社の選び方のポイントは以下の通りです。

・確かな実績や口コミがある
・地域の情報に精通した地元中心
・広範囲にM&Aをサポートし、近県の情報なども持っている

M&Aを利用したパン屋の事業承継の注意点

M&Aを利用したパン屋の事業承継の注意点は以下の通りです。

事業承継には時間がかかる

1つ目は「事業承継には時間がかかる」ことです。

事業承継には後継者を育てる期間が必要であり、それには時間がかかります。M&Aの場合もすぐに候補者が見つかるわけではありませんし、見つかっても交渉など時間がかかります。
M&Aでの事業承継を検討しているのであれば、少しでも早くM&A仲介会社などに相談することをオススメします。

情報の機密性に注意

2つ目は「情報の機密性に注意する」ことです。

M&Aで事業承継を目指す場合、相手が法人ということも考えられます。その場合、秘密保持契約を取り交わします。交渉を進めていくと、相手側の会社の秘密情報を知ってしまい、内容を第三者に漏らしてしまうと、M&Aが破談になるだけでなく、損害賠償請求されてしまう可能性もあるのでご注意ください。

まとめ

パン屋と事業承継について解説してきました。以下、まとめになります。

・パン屋の事業承継では後継者探しが難しく、見つからないまま高齢化で店をたたむことが多い
・パン屋の事業承継でM&Aを利用する場合、まずは公的事業承継支援をしている事業引継ぎ支援センターへ相談しに行き、後継者が見つからなかった場合は民間のM&A仲介会社を紹介してもらう
・パン屋のM&Aを利用した事業承継は時間がかかり、情報の機密性に注意しなければいけないことを知った上で利用する

後継者問題はパン屋だけでなく、経営者の高齢化を迎える企業において深刻な問題になっています。特にパン屋は経営者自体がパン職人ですので、年齢と共に体力が衰え、店が経営できなくなってしまいます。そうならないために、元気な内に早めに後継者探しを行い、自力でできない場合はM&Aを利用した事業承継を行いましょう。

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