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経営承継円滑化法とは? 改正内容も合わせて紹介

事業承継を行う上で、時間や手間、多くの費用が掛かるため積極的に行うことが出来ない経営者が存在します。法律や手続きなど難しいことに頭を抱えてしまい、尻込みしてしまうこともあるでしょう。

今回は、事業承継を行う際に大きな助けとなる制度「経営承継円滑化法」の概要と改正したことで何が変わったのかを紹介していきます。

経営承継円滑化法とは

経営承継円滑化法とは、2008年に中小企業庁主導で施行された「事業承継の推進」を目的とした制度です。事業承継を行うにはとても大きな負担を強いられていましたが、この法律により事業承継に取り組みやすくなりました。

この法律では、「事業承継税制」「民法の特例」「金融支援」の三つの柱で成り立っており、事業承継の負担軽減に繋がっています。

【事業承継税制】

株式や事業用資産を先代経営者から贈与・相続を受ける際にかかる税金を猶予又は免除することが出来る制度です。

事業承継税制を受けるためには「人の条件」「会社の条件」「スタートから5年間の条件」「免除になるための最後の条件」という4つの条件があります。

・人の条件は、先代経営者と後継者のそれぞれ満たすべき条件が設定されています。先代経営者は、会社の代表取締役を経験していることと贈与又は相続の直前に会社の筆頭株主であったこと、贈与時に代表取締役でないことが条件になります。

後継者の条件は、贈与を受けるときに会社の代表取締役になっていることと贈与又は相続を受けることで会社の筆頭株主になることです。

・会社の条件は、会社が中小企業であることです。中小企業の定義は、業種ごとに異なり、資本金基準と従業員基準が重要です。従業員数に関しては、減らすことは出来ませんが資本金を減らすことは出来るので、必要があれば調整しましょう。

・スタートから5年間の条件は、事業承継税制適用開始から5年間は、後継者が会社の代表者であること、後継者が会社の株式を保有し続けること、会社の雇用の8割を維持することを条件としています。

会社の雇用を8割維持することは、(言葉で説明すると簡単なのですが)実際に行うととても難しいために苦労していました。しかし、平成30年度の法改正により、条件を満たせなくても経営状況の悪化等の正当な理由があればOKと緩和されました。

・免除となるための最後の条件とは、後継者がさらに次の後継者(三代目)に事業承継をすることです。これにより、後継者の税金が免除されます。亡くなった場合も同様です。

事業承継税のメリットは、事業承継に係る税金の猶予が行える上に、(事業承継を行った場合)最終的に全額免除になる可能性があるということです。

【民法の特例】

民法の特例とは、遺留分に関する特例を指します。

遺留分とは、本来であれば自分の財産を誰にあげるのも自由なのですが、民法上遺族の生活の安定や最低限の相続人間の平等性を確保するため、相続人に最低限の相続の権利を保障することを指します。

事業承継においてはこの遺留分が問題になってきます。

(経営権確保のため)後継者に自社株を集中させたいのに、遺留分により、株式が親族で分散されてしまう恐れがあるのです。民法の特例において事業承継時の遺留分問題を解決します。

【金融支援】

金融支援はその名の通り、経営者の死亡または退任により事業を承継する際に必要となる資金の調達支援を行う制度です。

金融支援制度を受けるには、経営承継円滑化法に基づく県の認定が必要になります。

その際の認定審査には、2ヶ月ほどかかるので余裕をもって申請しましょう。

また、県の認定を受ければ中小企業信用保険法特例や日本政策金融公庫法特例を必ず受けられるわけではなく、それぞれに審査がありますので注意してください。

金融支援の対象になるのは、事業承継に伴う株式や事業用資産の買取費用・事業の運転資金・相続に係る費用などがあります。

融資金額も金融機関、対象費用によって変わっていくため、どのくらいの融資が受けられるのかはよく確認しましょう。

平成30年の法改正の背景

平成30年度の経営承継円滑化法の改正が行われた背景として、親族外の事業承継が増加したことが挙げられます。中小企業による経営者の高齢化に伴い、事業承継が困難になる中で、個人が事業を引き継ぐ際の資金不足、融資を受ける際の保証人の問題といったことが原因で廃業も増えています。

こういった問題で事業承継が思うように進まないことを危惧し、円滑に事業承継を行えるように法改正が行われました。

【改正前の問題】

法改正前の問題点(課題)として、後継者に集中させたい自社株式が遺留分の影響により、分散されてしまうことが挙げられます。

【法改正によるメリット】

経営承継円滑化法が改正されたことにより、どういうメリットが出来たのか。

3つの制度を紹介します。

【事業承継税制】

上記で紹介した事業承継税制ですが、期間や条件が設定されていました。

改正によって、これまでの措置に加えて10年間の特例措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大2/3以内)の撤廃、納税猶予割合を80%から100%に引き上げといった特例措置が創設されました。

これにより、先代経営者からの相続税や贈与税の猶予額が緩和され、後継者の負担が減ることになります。

【資金調達】

各都道府県の認定を受けた中小企業の後継者に対して、事業承継に係る資金の支援を受けることが出来ます。この制度により、事業承継に関する資金調達の方法(種類)が増え、幅広いニーズ(資金の)に対応することが出来るようになりました。

【遺留分の減額】

民法の遺留分の問題は改正前から叫ばれていましたが、これを解決する手立ても創設されました。この特例では、遺留分を受け取ることが出来る人全員の合意を得られた場合に限り、特例として「後継者が贈与した事業用資産・非上場株式等を遺留分侵害請求の対象外とする『除外合意』、後継者が事業を成長させたことで株式価値が上がった時、相続開始時の財産を元に遺留分の算定が行われる『固定合意』」の2つが適用されます。

経営承継円滑法のデメリット

事業承継税制によって、相続税・贈与税猶予や免除を受けることが出来るので、後継者の資金不足を救済する素晴らしい制度ですが、デメリットも存在します。

この制度を受けてから5年間、後継者は事業の代表者として経営を継続しなければならなく、持ち株も手放してはいけません。そのため、免除条件をクリアしない場合は猶予終了後、その税金を納めなければなりません。

また、決められたルールを守れなかった場合、この制度は打ち切られ、税金の納付義務が発生します。後継者はこのデメリットを押さえ、覚悟を持って事業を承継しなければなりません。

また、事業承継税制は株価が高くないとあまりメリットがありません。

理由として、事業承継税制を申請するには複雑な手続きがあるので、専門家への依頼が必要になります。株価が低い場合、譲渡税よりも委託費用の方が高くなってしまいます。

特例措置がなくなる2025年以降には、猶予分の清算が必要になります。

途中で条件を満たせず、打ち切りになった場合にも税金の支払いが発生するので、資金確保のための計画を入念に練っておかなければなりません。

経営承継円滑化法の相談先

経営承継円滑化法についての説明をしてきましたが、制度の複雑さや法律が関わっていることから専門家のサポートが必須となるでしょう。そんな時は、以下の専門家に相談してみることをおすすめします。

【M&A仲介会社】

主に中小企業・中規模の企業のM&A支援を行っており、経営承継円滑化法に関しての相談・サポート体制も充分に整っています。各専門アドバイザーもおり、分野別の相談を行えることがメリットでしょう。

【税理士・司法書士・弁護士】

法律のスペシャリストであり、書類作成に大きな力を発揮します。

注意点としては、相談先によって費用に差があったり、相談内容によっては対応してくれないケースがあることです。

しかし、いい専門家に出会えれば、専門家の視点から様々なサポートを期待できるため、無料相談などを上手に利用して依頼するかを判断しましょう。

【商工会議所】

各地域に必ずある商工会議所には、法律相談窓口が設置されていることが大半です。

相談回数に制限を設けている場合が多いですが、関連する相談実績から正確に情報を集めることが出来ます。

経営承継円滑化法まとめ

以上、経営承継円滑化法について紹介しました。

改正前の円滑化法には問題点も多く、事業承継を推進するための足かせとなっていましたが、平成30年度の法改正により、事業承継を行いやすくなりました。

特に問題となる資金面の制度を緩和・増設することで円滑化を図っています。遺留分による後継者の株式贈与分散の問題と相続税または贈与税の猶予(及び免除)により資金不足の解決策を講じているのです。

資金不足に関しては、融資支援の対象を幅広くすることで、資金調達を緩和させたこともメリットとなります。

後継者問題、資金面の相談には事業承継アドバイザーや法律の専門家に相談し、なるべく早い時期から準備を進めていくことで円滑に事業承継を行えるようにしましょう。

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