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事業承継 バイアウト解説

会社の経営権を後継者に引き継ぐことを事業承継と言います。事業承継には、様々な承継方法が存在するのですが、事業承継関連の情報を集めていると「バイアウト」という言葉を度々目にします。今回は「バイアウト」に関して解説していきます。

バイアウトとは?

バイアウトは、経営が悪化した場合に経営者または従業員が経営権を買収することを指します。バイアウト(Buy out)=買収と訳すことが出来、業績悪化を立て直し継続していくためには必要な手段になります。アメリカでは長く好まれている手法ですが、最近では日本でも多く見られるようになってきました。

【M&Aとの違い】

M&Aも企業を買収するといった意味では同じです。バイアウトとM&Aは実施する目的と買い手が違います。

バイアウトは買収した人物の収益拡大を狙うのが基本で、買い手は自社内にいます。

一方、M&Aは事業拡大や収益性の向上を狙う目的で、他社が買い手となります。

この違いがバイアウトとM&Aにはあります。

【バイアウトを行う理由】

日本でバイアウト手法が取り入れられるようになってきた理由は、更なる企業成長の向上効果が高いと分かったことにあります。会社のことを熟知している社内の人間が買収をすることで会社の良さを活かしつつ、新たな発想でサービスを展開していく機会を増やせるといったメリットがあるためです。

バイアウトの種類

バイアウトの種類は大きく4つに分けることが出来ます。

1マネジメント・バイアウト(Management Buy Out)

2エンプロイー・バイアウト(Employee Buy Out)

3レバレッジド・バイアウト(Leveraged Buy Out)

4マネジメント・エンプロイー・バイアウト(Management & Employee Buy Out)

これらの違いはバイアウトを行う人物になります。それぞれ解説していきます。

【マネジメント・バイアウト(MBO)】

マネジメント・バイアウトは、会社の経営陣や経営に関わっている人が株式を買い取って経営権を取得することです。マネジメント・バイアウトの目的は、経営体制の見直しと上場廃止が主に挙げられます。

メリットは、MBOを行うことで経営権が集中するため、意思決定がスムーズになり、長期的な視点で経営戦略を立てることが可能になるので企業成長の可能性が向上します。また、MBOはM&Aとは違い、第三者が経営権を手にいれないので、従業員からの不満が出にくく、モチベーション低下を避けることが出来ます。

マネジメント・バイアウトのデメリットですが、売却側は高値で売却したいが、経営陣は可能な限り安く株式を買い取りたいので、利益相反になり、意見が対立してしまうことです。

双方が納得いく範囲の価格で買収することが大切になります。

上場企業がMBOを行うと上場廃止となるため、市場からの資金調達は出来なくなります。

資金繰りには細心の注意が必要でしょう。

経営権の集中は企業変革のきっかけになる可能性を含んでいますが、悪い方向に働くと何も変わらないといったことも考えられます。もしくは経営の変化に対応しきれずに経営が悪化してしまう可能性があることもデメリットとして挙げられます。

【エンプロイー・バイアウト(EBO)】

エンプロイー・バイアウトは、社内の従業員による企業買収のことを指します。

EBOの主な目的は、後継者を作ることになります。後継者を見つけることが出来ない場合に、事業をよく知っている信頼できる従業員を後継者に指名した場合、EBOを用いることがあります。

EBOを行うメリットは、会社のこと、事業内容を熟知している従業員が経営権を持つので、引継ぎがスムーズな点が挙げられます。

ほかの従業員にとっても、よく知る人物が迅速に経営者に移行するため、環境が大きく変わることのない安心感のある引継ぎが行えるのもメリットでしょう。

EBO最大のデメリットは資金面です。会社の経営権を得ることのできる株式を購入するには、まとまった金額が必要になります。企業規模によっては、自己資金のみでの株式購入は難しいため、銀行融資等の方法を選定していかなければなりません。

【レバレッジド・バイアウト(LBO)】

レバレッジド・バイアウトはM&Aの費用を調達する1つの手法です。M&Aには多額の費用が掛かるため、買収側の負担がとても大きいことが問題として挙げられます。

これを解決するのが、M&Aにおける売却企業の資産やキャッシュフローを担保にして借入金を返済するレバレッジド・バイアウトです。

これにより、売却側が買収費用を背負うことになるため、買収企業側は多額の費用をかけずにM&Aを行うことが出来ます。

レバレッジド・バイアウトの特徴は、売却企業の資産価値を基準に融資を受け、資産価値の高さによっては高額の資金を調達できることにあります。

企業の将来性によって、高額の融資を受けることができるため、有望な企業であるほど好まれる方法の一つです。

レバレッジド・バイアウトによって発生した借入金は、売却企業が長期に渡って返済していきます。M&Aの効果により、経営状態が改善していくと返済期間は短縮することも可能です。

【マネジメント・エンプロイー・バイアウト(MEBO)】

マネジメント・エンプロイー・バイアウトは、経営陣と従業員が一丸となって会社や事業の一部を買収することを指します。

MEBOは、経営者と従業員が自社株をそれぞれ所有するため、会社の業績が上がれば双方に金銭的メリットが発生するため、経営者・従業員のモチベーションアップに繋がります。

また、株主に左右されることのない経営を行っていくことが出来るという点もメリットになります。

デメリットは、マネジメント・エンプロイー・バイアウトの実現が非常に難しいということです。自社株購入に賛同してくれる社員が少ないと実現せず、買収に必要な費用を準備するのも難しいため、MEBOが用いられることは非常に少ないです。

もちろん実現すれば、企業の経営状態の向上に大きな助けとなるでしょう。

各バイアウトの流れ

【マネジメント・バイアウトの流れ】

SPC(特別目的会社)を設立し、買収会社の受け皿とします。SPCは、バイアウトのための会社ですので実態はなく、買収される会社から完全出資の子会社として設立します。

次にバイアウトに必要な資金を投資ファンドや金融機関から借り入れで調達します。

調達した資金で、SPCが対象会社の株式を買収し、合併を行うことで、マネジメント・バイアウトは完了になります。

【エンプロイー・バイアウトの流れ】

基本的な流れは、マネジメント・バイアウトと一緒になります。

まず、後継者となる従業員がSPCを設立、資金調達を行います。

従業員個人での資金調達には限度があるので、従業員の用意できる範囲内で株価を決定します。この時、議決権を持てる2/3以上の株式を買収できるように資金調達と株価を調整しましょう。資金が不足してしまう場合は、融資や投資ファンドも検討しましょう。

対象会社の買収を行い、子会社となった対象会社を親会社のSPCと合併しましょう。

これでエンプロイー・バイアウトは完了です。

【レバレッジド・バイアウトの流れ】

レバレッジド・バイアウトでもSPCを設立します。その後金融機関の借り入れで資金を調達します。次にM&A対象企業の資産価値・キャッシュフローなどを調査・評価します。これはレバレッジド・バイアウトを成功するかどうかの重要な作業になります。

調達した融資資金を元にM&Aを実行します。その後SPCと合併を行い、借入金の返済を行い完了します。

【マネジメント・エンプロイー・バイアウトの流れ】

マネジメント・エンプロイー・バイアウトは、まず経営陣がSPCを設立します。次に経営陣・従業員からバイアウトに必要な資金を調達します。調達した資金で対象会社をSPCの完全子会社とします。最後にSPCと対象会社を合併して完了となります。

バイアウトを成功させるには?

バイアウトを成功させるには、起業時からバイアウトのことを考えておき、自社の企業価値を把握しておくことです。そしてバイアウトの専門家に相談することも抑えておきましょう。

【企業価値】

バイアウトの成功に欠かすことが出来ない企業価値。自社の企業価値がどのように評価されるかを正確に把握しておくことで、バイアウトに最適のタイミングを見極めることが出来ます。株式の価格は、企業価値によっておおきく変動するため、とても大切なポイントになります。

【起業時から逆算】

バイアウト実行について起業した時から逆算して考えておくことで、常に冷静な判断を行うことが出来ます。目指すゴールを決めておくことで、迷いのない経営を行うことが出来るので、比較的安定した企業経営を行えるでしょう。

企業価値を高めていき、株価が高くなった最適のタイミングでバイアウトが行えるように備えておきましょう。

【専門家への相談】

バイアウトファンドやM&A仲介会社などのバイアウト専門家の利用も考慮しましょう。

バイアウトファンドは、投資家からお金を集め、業績不振の会社に投資を行い、後利益を投資家に還元するファンドです。業績不振であっても経営の立て直しを行うことで利益を獲得出来ます。

M&A仲介会社は、会社売却・事業売却をする際のコンサルタントを行ってくれます。企業価値評価を専門的な視点で行ってくれます。

どちらも豊富な知識と実績を持っているので、大きな助けとなってくれるでしょう。

ほかにもバイアウトに際してのサポートを行ってくれる専門家は多数存在します。

目的や助けてほしい問題点に絞った依頼でもフルサポートでも相談してみましょう。

事業承継 バイアウトまとめ

以上、事業承継におけるバイアウトについて紹介しました。

今回紹介した4つのバイアウトの方法は、代表的なバイアウトの種類であり、バイアウトに関する方法は他にも存在します。投資に関するものもありますので、気になる方は調べてみてください。事業承継で、会社内での後継者を選ぶという方は、ぜひバイアウトを活用してみましょう。

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